NECソリューションイノベータは2017年1月25日、人間が歩く様子をセンサーで捉えて、その動きを理想の姿勢と比較して評価するシステム「NEC歩行姿勢測定システム」を発表した。アシックスと共同で開発した。1月31日に発売の予定。価格は1年ライセンスが15万円で、無期限ライセンスが40万円(どちらも税別)。Windows 10で動作するソフトウェアの形で提供する。使用するには別途Windows 10が動作するPCとセンサーが必要。
このシステムの特徴は、センサーとしてMicrosoftの「Kinect v2センサー」を利用すること。新たにセンサーを開発せずに、既存品を流用することで、システム全体の導入コストを抑えている。Kinect v2センサーはMicrosoftのゲーム機「Xbox One」のオプションで、マイクやカメラ、赤外線センサーなどを備えている。日本マイクロソフトのWebサイトでは、1万6178円(税込)で販売している。
もう1つの特徴は、普通の衣服のまま三脚に設置したKinect v2センサーに向かって6m歩くだけで計測できるという点。歩行姿勢を計測するシステムの中には、身体のあちこちにマーカーを付けなければならないものもあるが、今回発表したシステムなら、マーカーを付けず、普段の服装のままで計測できる。
図 Kinect v2センサーに向かって6m歩くだけで計測できる
出所 NECソリューションイノベータ
歩行姿勢を評価するアルゴリズムはアシックスが開発したもの。「歩行速度」「頭の揺れ」「脚の上がり」「つま先の上がり」など36項目を評価する。36項目すべての評価値だけでなく、全項目を「歩く速さ」「ふらつき」「左右差」「身体の軸」「腕振り」「足の運び」の6つに分類して、それぞれの分類の総合評価も算出する。さらに、6項目を「速度年齢」「バランス年齢」「姿勢年齢」に分類して、それぞれの評価値を年齢で算出する。
図 歩行姿勢は36の項目で評価する。36項目を6つに分類した総合評価や、3つに分類して年齢で評価した結果も提示する
出所 NECソリューションイノベータ
歩行姿勢の計測には、Kinect v2センサーが備える機能を利用する。Kinect v2センサーは捉えた画像から人間の関節を検出する機能を持つ。さらに、赤外線レーザーを発射し、反射光をセンサーで捉え、反射光が届くまでにかかった時間で、対象物の距離を算出する機能を持つ。この機能を利用して、頭やつま先、関節など人体の「特徴点」20箇所を検出し、その動きを捉える。ただし、Kinect v2センサーはつま先を検出する機能を持たないので、この点はNECソリューションイノベータが開発した技術を利用する。
図 計測中の様子。人間の身体の「特徴点」を捉えている
出所 アシックス
診断結果はソフトが動作しているWindows PCに蓄積する。計測対象の利用者ごとに計測結果をまとめて蓄積するので、歩行姿勢の変化を見ることもできる。例えば、歩行姿勢を計測した後、改善のアドバイスを提示し、そのアドバイスの効果がどれほど現れているのかという使い方もできる。接骨院で施術前と施術後の計測結果を比較して、改善点を明確に示すという事例もあるという。
計測結果と人名は個人情報となるので、現在のところはWindows PCに蓄積するだけにとどめているが、NECソリューションイノベータでは顧客の要望次第で、計測結果をクラウドで管理するシステムの開発も検討するとしている。また共同開発したアシックスは、このシステムを同社が運営する機能訓練特化型デイサービス施設「Tryus(トライアス)」に導入する。