KDDIは2017年8月2日、ソラコムの発行済株式を取得する株式譲渡契約を締結したと発表した。取得にかかる費用は非公開。8月下旬をめどに株式取得を完了させ、ソラコムをKDDIの連結子会社とする予定だ。
図 KDDIはソラコムを連結子会社化して、IoT向け通信事業を強化する
出所 KDDI、ソラコム
ソラコムはNTTドコモの携帯電話通信網を利用したIoT端末向け通信サービス「SORACOM Air」を提供している。最大の特徴はパケット交換、回線管理、顧客管理、課金などの通信事業を営む上で中核となる部分をAmazon Web Services上にソフトウェアとして実装していること。一般的なMVNO事業者なら多額の資金を投じて、専用の機器を導入して実現することを、ソフトウェアで実現したわけだ。しかも、Amazon Web Servicesは必要に応じてコンピュータリソースを自由に増減できる。つまり、利用者の増加にも簡単に対応できるのだ。またソラコムは通信サービスだけでなく、大手パブリッククラウドとの閉域網接続サービスや、指定のサーバーにデータを暗号化して送信するオプションサービスも提供している。
NTTドコモの回線を使って通信サービスを提供しているソラコムがKDDIの傘下に入ることで、サービスの提供形態が変わるのではないかなどと心配するユーザーもいるかもしれないが、ソラコムの創業者で代表取締役社長を務める玉川憲氏は同社のブログで、KDDIの傘下に入っても「現在ソラコムが提供しているサービスは、既存のお客さまも新規のお客さまも、引き続き変わらずご利用いただけます」と強調している。
また、ソラコムはKDDIの携帯電話通信網とAmazon Web Services上に構築した中核部を組み合わせたIoT端末向け通信サービス「KDDI IoTコネクト Air」をKDDIと共同で開発している。このサービスは2016年10月に発表となり、12月から利用開始となった(参考記事)。玉川氏はKDDI IoTコネクト Airの共同開発に取り組んだ後も、密な連携を続けていたと明かし、その流れからKDDIの子会社になることが決まったとしている。
玉川氏はソラコムの今後について、KDDIのビジネス基盤を活用して世界で通用するサービスを提供することを目指すとしている。ソラコムはすでにアメリカやヨーロッパに進出しているほか、世界120以上の国の事業者と提携して通信サービスを提供している。さらに世界進出に力を入れるということは、Amazon Web ServicesやMicrosoftなど世界を代表する企業となり、世界中でサービスを展開することを目指すとも考えることができる。実際、先述のブログではAmazon Web Servicesのように「世界中のお客様に使っていただける」ようにビジネスを成長させていきたいと意気込みを見せている。
ソラコムは2014年11月に創業し、2015年9月から通信サービスの提供を始めている。それから2年も経っていないが、今では国内外に7000以上の顧客を抱えている。まさに「急成長」と言える勢いで成長している企業だ。KDDIの傘下に入ることで、ベンチャー企業としては「Exit」ということになる。しかし、IoTの技術はようやく世界中に浸透し始めたところだ。これまでの成長の勢いも素晴らしいものがあったが、これからはさらに大きく成長していけるだろう。玉川氏はブログで、KDDI傘下に入ることを「ExitというよりEntrance」と表現し、ソラコム単独では手が届かなかった領域にまで進んでいくとしている。「世界のソラコム」になる日は案外近いのかもしれない。