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NEDO、東大や産総研と共同でAIを活用した風力発電設備のメンテナンス技術を開発

2018/04/02
(月)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

NEDOは、東京大学や産総研と共同で、AI(人工知能)を活用した風力発電設備のメンテナンス技術を開発したと発表した。

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2018年3月30日、国立大学法人東京大学や国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)と共同で、AI(人工知能)を活用した風力発電設備のメンテナンス技術を開発したと発表した。この技術を活用することで、風力発電設備のメンテナンスによる停止時間を短縮し、設備利用率を高めることができるという。

NEDOによると、日本では風力発電設備の設備利用率が低い水準にとどまっているという。その原因としては、複雑な地形や気象条件の変化が原因で故障や事故が発生するというものが挙げられる。故障や事故が多発して、交換作業などのメンテナンスに長い時間がかかるため、設備利用率が低くなるというわけだ。

そこで今回は、異常の兆候を検知する技術を開発した。風力発電設備の実機を使って、軸受の損傷がどのように進展するかを調べ、ごくわずかな損傷から、故障が発生するまでにどのような振動が発生するのかを確認した。これには、風力発電設備に備わっているCMS(Condition Monitoring System)を利用した。CMSとは、振動センサー、変位センサー、温度センサーなど各種センサーの計測値を収集し、異常を発見するシステムだ。

CMSのデータを収集したら、東京大学と産総研が開発したAI技術で解析した。その結果、主軸や増速機軸受などの大型部品の異常兆候の検出に成功した。大型部品の異常兆候の検出はこれまで困難とされてきたことだという。また、部品損傷進展モデルを作成し、そのモデルを活用した診断予測技術も開発したという。

図 風力発電設備の故障時期を、物理モデル(右上)とAI(右下)を利用して予知する

図 風力発電設備の故障時期を、物理モデル(右上)とAI(右下)を利用して予知する

出所 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

今回開発した技術で、国内にある43基の風力発電設備を診断したところ、実際に部品交換を決定する1~3カ月前に異常兆候を検出し、そのうちのおよそ9割が実際の故障につながるものだったという。NEDOは、この技術を活用して故障前のわずかな異常が発生している段階で部品交換などの対策を打てば、メンテナンスによる停止時間を短縮でき、設備利用率を上げることが可能だとしている。

NEDOは今後、風力発電事業者が保有しているCMSデータを蓄積し、各社の秘匿情報を保護した上で、各社が利用できるデータベースとして公開し、今回開発した技術の普及を図る構えだ。


■リンク
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

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