何が必要か
─第3回 風力発電の拡大と電力需給バランス:風力発電にできること─何が必要か
電力系統側と風力発電側の協調動作実現のためには、両者間が通信を介してリアルタイムに制御を実施できるためのシステムと制度の両方が必要である。
典型的な海外事例としてよく示されるものに、スペインの再生可能エネルギー制御センター(CECRE)がある(図7)。10MW以上の風力発電はRESCCと呼ばれる再生可能エネルギー制御センター(スペイン国内で33カ所に設置)の管理下に入ることが義務付けられている。風力発電出力の状況は、随時監視されてCECREへと送信される一方で、CECREでは電力系統全体の状況に応じて、風力発電の必要制御量を算出してRESCCを介して風力発電所へ制御指令を送出する。
図7 再生可能エネルギー制御センター
〔出所 新エネルギー小委員会 第2回系統ワーキンググループ、「風力発電の系統連系可能量拡大策」より〕
このように階層的な構造を介して、リアルタイムに電力系統全体の助けとなる制御方式が設計されているのである。ドイツやアイルランド、デンマークなど、風力発電の導入が進む他国でも類似した概念、すなわち、通信を介して電力系統側からの風力発電制御をリアルタイムに実現するシステムが構築されている。
風力発電の導入拡大を主軸に沿えた将来像を目指すために、ここまで踏み込んだシステム設計が海外事例として存在することを念頭に入れ、今後の再エネ普及の在り方は議論されるべきであろう。
(第4回へ続く)
◎Profile

辻 隆男(つじ たかお)
横浜国立大学 大学院工学研究院 知的構造の創生部門 准教授
1977年11月22日生まれ 2006年3月 横浜国立大学 大学院工学府物理情報工学専攻 博士課程後期修了 同年4月 九州大学 大学院システム情報科学研究院 電気電子システム工学部門 寄附講座(九州電力)教員 2007年4月 横浜国立大学 大学院工学研究院 知的構造の創生部門 助教に着任 2011年4月 同准教授、現在に至る 博士(工学) 主として、電力システムの運用・制御・解析に関する研究に従事