川崎市スマートシティプロジェクトの全貌 ≪前編≫ ―ビジネス実証のフェーズに入った市民参加型の小杉駅周辺地区実証事業―
2015年9月1日 0:00
2015年3月17日、神奈川県川崎市は「川崎市スマートシティ推進方針」注1の策定を発表した。基本理念は「エネルギーの最適利用とICT(情報通信技術)・データの利活用により、地域課題の解決を図り、誰もが豊かさを享受する社会の実現」である。課題分野とは「エネルギー」「生活」「交通」「まちづくり」「産業」の5分野で、これら各分野においてスマートシティの取り組みを推進している。
特集の前編では、川崎市のスマートシティ推進事業の全体像を紹介した後、特にエネルギー分野の取り組みの中で、2014年から開始されている「小杉駅周辺地区スマートコミュニティ事業」を中心に解説し、後編では、同市の「水素社会の実現に向けた」水素戦略を紹介する。
なお、本記事は、川崎市 総合企画局スマートシティ戦略室、株式会社大和総研ビジネス・イノベーション システムコンサルティング本部、慶應義塾大学 理工学部 西研究室の皆様への取材をもとに、まとめたものである。
川崎市のプロフィールと取り巻く環境
福田川崎市長の掲げた「成長と成熟の調和による持続可能な最幸のまち」をめざし、これを支えるものとして「安心のふるさとづくり」「力強い産業都市づくり」の2つの柱で都市づくりが推進されている。
スマートシティを推進する川崎市にはどのような特徴があるのだろうか。
人口147万2,568人、69万7,244世帯の川崎市注2は、全国の政令指定都市の中で人口第7位(2015年8月1日現在)の自治体(表1)である。全国的にはすでに人口減少傾向の中で、引き続き人口の増加が続いていて(図1参照)、その増加率は政令指定都市の中でも最も高い位置を占めている。
表1 川崎市のプロフィール
〔出所 『川崎市統計書』〔平成26年(2014年)版-12 電気・ガス及び上下水道、http://www.city.kawasaki.jp/200/page/0000066189.html〕ほか各種データより〕
図1 川崎市の人口の推移
〔出所 「川崎市スマートシティ推進方針」参考資料より、2015(平成27)年3月〕
川崎市は、臨海部を中心にメガソーラーやバイオマス発電所を含め多様な発電施設が立地している。その合計の発電能力は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県の一般家庭の消費電力に相当する約630万キロワットと言われている(表2)。これは大規模エネルギー供給拠点として、首都圏における重要な役割を担っており、潜在的な未利用エネルギーなども存在している。
表2 川崎臨海部の主な発電等施設
〔出所 ©2011-2015 川崎市総合企画局臨海部国際戦略室 2015.6改訂〕
また臨海部は、日本を代表する工業地帯であり、高度なものづくり技術とともに、公害対策をはじめとしたさまざまな環境問題に取り組んできた過程で蓄積された環境技術をもつ世界的企業が多数立地している。
さらに市内には、情報通信やエレクトロニクスなどの分野における高度な技術力をもつ企業が立地するとともに、200を超える民間企業、大学などの研究開発機関が集積している。
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