Appleのスマートハウスビジネスへの新戦略

─ その布石となる新機能「HomeKit」(ホームキット)を発表 ─

インプレスSmartGridニューズレター編集部

2014年7月1日 0:00

2014年6月2日、Apple(アップル)はアメリカのサンフランシスコにおいて、開発者向けイベントである「WWDC 2014」を開催した。同社のイベントはユーザーだけでなく、多くの国内外のメディアに注目されているが、今回、スマートグリッド関係者にとって注目される、「HomeKit」といわれるスマートハウス向けの新機能が発表された。最近では、Googleが室内の湿度温度計企業Nest Labsを買収したり、Amazonが食品や日用雑貨の買い物メモ専用デバイス「Amazon Dash」を発表したりと、「ホーム」は、ラスト1マイルの新たなビジネス領域として各社が注目している。ここでは、今後のApple のビジネスにとって大きな影響を及ぼすと考えられる新戦略について、その概要を解説する。

本来の意義で注目されたWWDC 2014 

Appleのイベントはユーザーだけでなく、多くの国内外のメディアも注目している。

それらのメディアでは、Appleのイベント開催前になると、次はどのような新製品が発表されるのかについての予想を公開しているところも少なくない。

スティーブ・ジョブズが亡くなって(2011年10月5日。享年56歳)からしばらく経ち、最盛期ほどの影響力はないという指摘があるとはいえ、イベント前に新製品の予想がここまで飛び交う企業というのはAppleを除いてあまりないだろう。

今回のイベントでは、iPhoneやiPad、あるいはMacといった目玉となるような新しいハードウェア製品の発表がなかったため、その結果に失望しているメディアも見受けられた。

しかし、そのような記事が必ずしも適切でないことは、この「WWDC」というイベントが“Worldwide Deve-lopers Conference”(年次開発者会議)の略であることを踏まえればよくわかる。言い換えれば、今回のイベントは、WWDC本来の目的にかなったイベントであったと言えるだろう。

今回のWWDCでは、Mac向け新OSであるOS X Yosemite(OS 10 ヨセミテ)や、iPhoneおよびiPadなど向けの新OSであるiOS 8に加え、4,000もの新しいAPI注1(Application Programming Interfa-ce)が公開された(図1)。

このように誰にとってもわかりやすい重要な発表はなかった「WWDC 2014」だが、開発者にとっては大いに刺激的な、そして振り返れば歴史に残るような発表が相次いだイベントとなった。

なかでもスマートグリッド関係者にとって見逃せないのが、Appleによるスマートハウスビジネス参入の布石となるHomeKit(ホームキット)である。

HomeKitとは、2014年の秋頃にリリースされるiOSの新バージョン iOS 8に搭載される予定の新機能である。WWDC 2014のセッション全体から見ればHomeKitの扱いはあまり大きくなく、かつその機能の詳細についても限定的にしか公開されていない。

ただし、このHomeKitが、今後のAppleのビジネスにとって大きな影響を及ぼす存在となることは確かであり、スマートグリッド関連のビジネスに携わっている関係者にとっても重要なものである。そのため、ここでは限られた公開情報を元に、その概要を解説していく。


▼ 注1
API:Application Progra-mming Interface。あるソフトウェアやアプリケーションの機能を外部のアプリケーションから容易に利用できるようにするためのインタフェース

◆図1 出所
WWDCのオンライン配信画面から著者キャプチャ

人気記事トップ10

人気記事ランキングをもっと見る
インプレスSmartGridニューズレター

定期購読は終了いたしました