[米国のエネルギー政策 ①]第2次トランプ政権の政策の大転換とその背景を読み解く(4ページ目)
〔5〕各政権における再エネの導入容量(MW)の比較
次に各政権における再エネの導入容量(MW)を見る。系統スケール(1MW以上)の太陽光発電と陸上風力発電の導入量の推移は、それぞれ図4と図5に示す通りとなっている。
太陽光発電は第1次トランプ政権、バイデン政権の両期間において毎年の導入量が増加したが、特にバイデン政権後半の2023~24年の伸びが大きい。
陸上風力発電については毎年の導入量が第1次トランプ政権では増加、バイデン政権では減少となっている。化石燃料重視のトランプ政権、再エネ重視のバイデン政権であったが、陸上風力発電については政策目標とは逆の結果となっている点が興味深い。洋上風力発電については図5には含まれていないが、American Clean Power Associationによると、2024年末の累積導入量は174MWとなっている。
図4 米国の太陽光発電の導入量の推移(2010年~2025年6月、1MW以上の案件のみ)
出所 Preliminary Monthly Electric Generator Inventory (based on Form EIA-860M as a supplement to Form EIA-860) June 2025 を基に運転開始済の案件の容量を集計して著者作成
図5 米国の陸上風力発電の導入量の推移(2000年~2025年6月)
出所 Preliminary Monthly Electric Generator Inventory (based on Form EIA-860M as a supplement to Form EIA-860) June 2025 を基に運転開始済の案件の容量を集計し著者作成
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Ⅲ. まとめ:トランプ政権は化石燃料推進、バイデン政権は再エネ重視 |
本稿では、第2次トランプ政権の基本政策目標を整理し、さらに第1次トランプ政権とバイデン政権時にエネルギー市場や米国の電源構成がどのように変化したかを示した。大まかな政策方針としては、トランプ政権は気候変動対策を重視せず、エネルギー支配を狙った化石燃料の開発の推進、バイデン政権は再エネ重視であった。
しかし、米国の電源構成の変化や風力発電の導入量は、必ずしも両政権の政策方針を反映した結果とはならなかった。市場要因や他国・地域の政策など、政策以外の要因が大きく働いていることを示唆している。
第2次トランプ政権においては、OBBBAによりEV、太陽光発電、風力発電の財政的支援策が早期終了となることが決定したため、米国のエネルギー市場は大きく転換する可能性がある。
OBBBAを中心とする第2次トランプ政権のエネルギー政策については、第3回でさらに詳しく解説する。
◎著者プロフィール
大串 康彦(おおぐし やすひこ)
1992年に荏原製作所入社後、環境・エネルギー技術の開発に従事。2006年~2010年にカナダBC Hydroでスマートグリッド事業を担当。2016~2017年は英国RES日本法人で系統用蓄電池事業に従事。2017年~2023年にLO3 Energyの日本担当ディレクターを務める。現在は産業戦略アナリストとして、グローバルな産業政策と企業戦略の分析・立案を行う。著書に『商用化が進む電力・エネルギー分野のブロックチェーン技術』(インプレス)『蓄電池ビジネス戦略レポート』(日経BP)がある。