「エリクソン・フォーラム 2026」レポート:AI時代の通信革命と日本の役割 ―エリクソンの技術戦略と国内エコシステム構築[2ページ目]
[2]AIの普及に伴い変化する通信トラフィック
世界55社のモバイル通信事業者を対象とした分析によると、12カ月間のトラフィック増加率において、上りの増加率が下りを上回る事業者は約8割に上る。内訳は、上りの増加率が下りの1.5倍超が31%、1〜1.5倍が47%となっている。
一方、上りと下りの増加率がほぼ同等の事業者は11%、下りの増加率が高い事業者は11%にとどまる(図2)。この結果は、AIアプリケーションが普及する前の時点であり、今後のAIの進展でさらに加速するとエリクソンは見ている。
エリクソンが年2回発表している「モビリティ・レポート」の予測では、上りトラフィックは5年ごとに約3倍、総トラフィックは約2倍になる見通しだ。マンスール氏は、トラフィックは、どれだけ増えるかだけでなく、どのような種類が増えるかが重要で、提供する機能や開発する製品、ネットワークアーキテクチャにも変化が求められる、と解説する(図3)。
左: 図2 12カ月間のトラフィック増加率:世界55社の通信事業者のアップリンク(上り)とダウンリンク(下り)
右: 図3 モバイルデータ通信のシナリオ
出所 (図2、図3ともに)エリクソン・ジャパン株式会社「エリクソン・フォーラム 2026 メディア・セッション」より
[3]「精度の高いインテリジェンス配置」の重要性
トラフィック増加に対応するためには、ネットワークの性能と能力を高めることが必要となる。そのためにエリクソンは「精度の高いインテリジェンスの配置」(deploying intelligence with precision)を掲げている。これは、適切なハードウェアとソフトウェアを、ネットワークの適切なノードに置くという考え方だ。
北東アジアの通信事業者に典型的なネットワークは、屋上などに置く無線基地局、ベースバンド集約拠点、エッジデータセンター、通信事業者のコアサイト、パブリックデータセンターやAIデータセンターで構成される。同社は、AI処理機能の配置を図4のように整理している。
図4 「精度の高いインテリジェンスの配置」具体例
(1)無線基地局・ベースバンド集約拠点
全国に数多くある基地局や集約拠点では、電波を扱う通信処理と、その中で動くAIの判断(推論)を、同じ機器でこなす。拠点の数が多いほどコストにかさむため、TCO(総所有コスト)を抑えた専用ハードウェアが不可欠で、エリクソンは独自設計のASIC に大きく投資し、必要な箇所ではCPU も活用している。
将来はNPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット) の導入も視野に入れ、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせで最高の性能が出るよう、自社のソフトウェアで補完する方針だ。
(2)エッジデータセンター(エッジでのAI推論)
基地局のさらに上位にあるエッジデータセンターでは、学習済みのAIモデルを使って、即時判断(推論)が増える。この処理では、GPU やCPU、NPUの役割が大きくなる。
(3)上位ネットワーク(AIの学習および推論)
ネットワークのさらに上位では、AIの学習(トレーニング)も行われる。学習と推論の処理には、GPUやCPU、NPUに加えて、TPU(Tensor Processing Unit)やLPU(Language Processing Unit)など、タスクごとに適した専用ハードウェアが必要になる。
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