「エリクソン・フォーラム 2026」レポート:AI時代の通信革命と日本の役割 ―エリクソンの技術戦略と国内エコシステム構築[6ページ目]
【3】 グローバルで推進する信頼性の高い技術エコシステムの構築

ソレリウス氏は、エリクソンが日本をはじめ世界的規模で推進するエコシステム構想と、部品分野に強みをもつ日本企業への期待を語り、村田製作所と住友電工との新たな協業を発表した。
[1]5Gの高度化に伴う巨額R&D投資と「デュアルユース」
5Gは、いまやミッションクリティカルな社会インフラであり、防衛分野などでも活用が進んでいる。これらに求められる高いセキュリティ、レジリエンス、信頼性の確保、そして更なる技術進化には巨額の投資を要する。
同氏は、AIに必要な要件もこうしたサービスと同じ種類で、上り・下りの性能に加え、セキュリティ、レジリエンス(強靭性)、信頼性が問われると指摘する。5Gは、すでに高度な通信技術として進化を遂げ、そして、6Gはさらにその先を行く。
こうした中、技術の最前線にとどまるには巨額の投資が必要となる。エリクソンは研究開発に毎年50億米ドルを投じ、その多くを日本で行っているとソレリウス氏は明かした。この規模の投資を毎年、数十年にわたって続けられる企業はほとんどなく、警察や消防だけで維持することもできない。そのため、5Gではデュアルユース(軍民両用)技術への依存が強まっているという。
[2]「Trusted Tech Alliance」による国境を超えた連携
巨額の投資を支える開発・展開の規模を確保するには、企業や国の枠を超え、テクノロジースタック(技術を積み重ねた構造)の各層で連携する必要がある。エリクソンは150年にわたり、世界各国の政府や顧客に信頼できる機器を供給してきたとし、その原動力となっている「Trusted Tech Alliance」(トラステッド・テック・アライアンス)を紹介した。
このアライアンスは、志を同じくする世界のテクノロジー企業が国境を超えて連携する枠組みで、コネクティビティからクラウド、半導体、ソフトウェア、AIまで、信頼できるテクノロジースタックの実現に向けて共通の原則を掲げている(図10)。
参加企業はエリクソンのほか、米国のAWS(Amazon Web Services、アマゾンのクラウドサービス)、アンソロピック(米国の新興AI開発企業)、ASML(オランダの半導体製造装置メーカー)など16社。その中には日本企業のNTTとRapidus(ラピダス)の2社も加わっている。
図10 Trusted Tech Allianceが目指すもの
出所 エリクソン・ジャパン株式会社「エリクソン・フォーラム 2026 メディア・セッション」より
[4]日本の部素材・部品産業が握る成長のチャンス
ソレリウス氏は、経済安全保障を支える信頼性の高いテクノロジースタックを示し、日本の部品産業が担う役割を説明した。その構造は、「最上位のアプリ・利用者層」「中間のネットワーク・端末層」「最下層の共通技術基盤(半導体・部品等)」の3層で構成される(図11)。3層に分かれる(図11)。
ソレリウス氏が強調したのは、この最下層だ。ネットワークに使われる半導体や部品がここに含まれ、あらゆる層を底から支える。そのため、ある企業や国がこの層を提供できれば、それを利用するすべての人にとって欠かせない存在になる。
同氏が例に挙げたのが、大規模な5G無線機(Massive 5G Radio)だ。この無線機の部品のうち、図12の赤丸で示した部分は、供給元の選択肢が少なく、事実上、1つのエコシステムの中でしか見つからない。
一方、日本には強力な産業基盤と部品製造の力がある。エリクソンも、すでに40社を超える日本企業から部品を調達している。ただ、日本企業が扱っていない部品も残っており、これを日本が提供できれば大きな成長機会になると、同氏は語る。
好機とみるのは、同じ種類の部品が、通信機器以外にも使われるからだ。警察無線や軍用無線、レーダーを搭載した自動運転車などがその例で、開発の成果は航空・宇宙、自動車、AIインフラ、防衛など、幅広い先端産業に生かせる。重要部品の多様性とレジリエンスを高めることは、信頼できるテクノロジーエコシステムに欠かせない。日本の競争力強化、経済成長、輸出拡大にもつながる、というのがソレリウス氏の見方だ。
図11 経済安全保障を支える信頼性の高いテクノロジースタック
出所 エリクソン・ジャパン株式会社「エリクソン・フォーラム 2026 メディア・セッション」より
図12 新たなサプライヤーが求められている部品(赤丸部分)
出所 エリクソン・ジャパン株式会社「エリクソン・フォーラム 2026 メディア・セッション」より
[5]村田製作所・住友電工との協業と今後の展望
エリクソンのエコシステムの新たな一歩として、エリクソンはこの日(2026年9月28日)、村田製作所および住友電工とともに部品エコシステムを強化する取り組みを発表した注5。
目指すのは、両社がもつ世界をリードする先端部品技術と、エリクソンのグローバルなネットワーク技術、システムレベルの要件に関する知見の融合だ。横浜のエリクソンR&Dセンターを拠点に連携を深める。成果はラボでの試験にとどまらず、次世代製品に直接組み込まれる。今後は、日本のより多くの企業とも同様の取り組みを進め、順次、連携を広げていきたいと、ソレリウス氏は語った。
このようにエリクソンは、エコシステムを構成する各企業とともに、6G・AI時代に向け、信頼性、レジリエンス、エネルギー効率に優れたネットワークを支える技術を探り、最先端で競争力の高いものになるよう取り組む。
「テクノロジースタックに必要なすべてを1つの国だけで生み出すことはできません。信頼できるパートナーと、業界として結集していく必要があります」と、ソレリウス氏は強調した。そして、日本が部品製造で世界的により大きな役割を担うことへの期待を示し、講演を締めくくった。
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