東芝エネルギーシステムズと岩谷産業は2018年5月24日、北海道の釧路市と白糠町で構築してきた設備が整い、水素輸送網構築の実証実験を開始したと発表した。ダムに付設した小水力発電所で発電し、その電力で水電解装置を駆動させて水素を精製する。その水素を高圧ボンベなどに圧入して地域に届け、地域では供給を受けた水素で純水素型燃料電池を動作させて電力と熱を得る。水素の製造から貯蔵、輸送、利用までの一貫した流れを作りながらCO2排出を可能な限り抑えようという試みだ。
図 東芝エネルギーシステムズと岩谷産業が始めた水素輸送網構築の実証実験の概要
出所 東芝エネルギーシステムズ
水素精製に必要な電力は、白糠町にある「庶路(しょろ)ダム」に付設した小水力発電所(出力220kW)で発電する。この電力で、東芝エネルギーシステムズ製の水電解装置を作動させ、水を電気分解して水素を精製する。今回使用する水電解装置は、最大で1時間当たり約35Nm3の水素を精製できる。小水力発電の電力で水素を製造する実証事業は、これが国内初となる。
図 庶路ダムの外観。このダムに付設した小水力発電所で、水素精製に必要な電力を得る
出所 三井住友建設
製造した水素の貯蔵運搬は岩谷産業が担当する。運搬時は高圧のボンベ「カードル」などに水素を圧入し、車両で地域各所に輸送する。輸送先である釧路市内の福祉施設、白糠町内の酪農家、白糠町温水プールには東芝エネルギーシステムズの純水素型燃料電池「H2Rex」を設置してあり、供給を受けた水素で燃料電池を作動させ、電力と熱(熱湯)を得て業務で使用する。また、トヨタ自動車の士別試験場にも水素を運び、燃料電池車の燃料として消費する。
東芝エネルギーシステムズは、今回の実証実験を実施する北海道が寒冷地域であり、熱の需要が高いことを挙げ、純水素型燃料電池で発電する電気を利用するだけでなく、発電時に発生する熱も利用して熱湯を作って地域に供給することで、水素を最大限活用できると考えているという。
今回の実証実験は、環境省の「地域連携・低炭素水素技術実証事業」を受託して、東芝エネルギーシステムズと岩谷産業が実施するもの。実証実験は2019年度末まで続く予定だ。
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