[スペシャルインタビュー]

ウィルコムの次世代PHS(XGP)戦略を聞く(2):真のワイヤレス・ブロードバンドと次世代PHS

2008/10/03
(金)
SmartGridニューズレター編集部

≪2≫真のワイヤレス・ブロードバンドを目指して

■ ところで、携帯の世界では2G、3.5G、4G、有線の世界ではADSL、CATV、FTTHなど、多彩なサービスが提供されていますが、御社はどのようなワイヤレス・ブロードバンドを目指しているのでしょうか。

近 義起氏(ウィルコム 取締役 執行役員 副社長)
近 義起氏
(ウィルコム 取締役
執行役員 副社長)

 図8は、移動通信における2G、3.5G、4Gというマクロ・セルによる各世代の理論的な伝送速度と、ADSL、CATV、FTTHなど有線のブローとバンドの伝送速度を表現したものです。しかし、実態は図8のような理論値ではなくて、実効値は図9のようになるのではないかと思います。もちろん4Gはまだ体験したことはありませんので予測です。

■ 図8の右側に、「真のワイヤレス・ブロードバンド」(True Wireless Broadband)と言う部分がありますが?

 この「真のワイヤレス・ブロードバンド」という表現は、私が勝手につけた名前ですが、私たちはこれを目指していきたいと思っています。図10を見てください。

図10は、縦軸に「モビリティ」(移動性)、横軸に「実効速度(実際のスピード)=容量」を示し、横軸の右側がマイクロ・セル、左側がマクロ・セルとなっています。有線系のADSLやCATV、FTTH(光ファイバ)などは、固定通信ですからモビリティはありませんが、速度的にはブロードバンドを実現しています。一方、モバイル・システムというのは、現状のところハイ・モビリティ(高速移動)は実現しているものの、有線系のようなブロードバンド速度(例:FTTHの100Mbps)は実効的には達成していないのです。


図8 4Gは実際に100Mbps以上の速度を実現できるか(近氏の資料を編集部にて翻訳)(クリックで拡大)



図9 マクロ・セルによる3.5/4GはFMCを必要とする(近氏の資料を編集部にて翻訳)(クリックで拡大)



図10 マクロ・セルとマイクロ・セルのモビリティと伝送速度の比較(近氏の資料を編集部にて翻訳)(クリックで拡大)



図11 真のワイヤレスBBのインフラ(近氏の資料を編集部にて翻訳)(クリックで拡大)


このような傾向を見ますと、マクロ・セルを続ける限り、例えどんなシステムが登場しても同じことになるのではないかと思っています。したがって、もしマイクロ・セル方式とマクロ・セル方式の両方の良いところとったモバイル・システムを実現できれば、「真のワイヤレス・ブロードバンド」が実現できるのではないかと思います。

すなわち、モビリティもあり伝送速度も有線のブロードバンド並みになる、ということを目指していますが、これが実現できたらすごいことです。

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