今なぜ、AIOWNなのか

〔3〕IOWNの中核技術「APN」とは

 IOWNの中核技術の1つとして「APN(オールフォトニクスネットワーク)」が挙げられる。その機能は「光のままつなぐ」こと。
 現在の通信網では、光ファイバで伝送された信号をルータで一度電気に変換(光→電気)して経路を選び、再び光に戻す処理(電気→光)が繰り返される。APNは、この「光→電気→光」の変換をなくし、端末からネットワークまで一貫して光信号で通信を完結させる。これによって、データの送受信における遅延の大幅な削減と、消費電力の低減を同時に実現する。
 APNは前述したように、すでに構築が進んでおり、札幌から東京・名古屋・大阪・福岡を結ぶ主要都市間で構築済み。2027年度までに全国の県庁所在地へ拡大し、2030年には全国へ面的拡大することが計画されている。
 また、国際展開も加速している。台湾・中華電信との間では約3,000kmを片道約17msで結ぶ世界初の国際間APN開通を実現。推進団体である「IOWN Global Forum」には設立時の米国インテルやグーグル、ソニーの3社を含む170以上の企業・団体が参画(2026年5月時点)し、国際標準化を見据えた体制が整いつつある。

今なぜ、AIOWNなのか

 今なぜ、AIOWNなのか。その答えは、AIワークロード注4(AI Workload:AIシステムを運用のために実行される計算処理など負荷の作業量)の急激な変質にある。
 AI推論のワークロードは、2025年から2030年で4倍以上に急増し、2030年には全体の4割超を占めると予測されている注5。生成AIの普及当初、企業のAI活用は汎用的な業務効率化にとどまっていた。
 しかし今や、AIは企業のコア業務や専門業務に深く組み込まれ、さらには自動車やロボットと連携する「フィジカルAI」へと領域を広げつつある。これに伴って、AIが処理する作業の重心も「学習」(モデルの構築)から「推論」(AIを日常的に使う)へと急速にシフトしている。
 このAIワークロードの爆発的な拡大によって、インフラへの要件が根本から大きく変わる。従来のICT基盤においてデータセンターに求められるのは、「フロア面積」と「アクセスの良さ」、そして「帯域幅(Gbps)」であった。
 しかしAI利用の高度化によって、これらに加えて次のような内容が不可欠となり(図3)、インフラへの要求水準が跳ね上がる時代となった。
 (1)GPUを大量搭載する結果、求められる発熱対策
 (2)データセンターやサーバ間をリアルタイムでつなぐ超低遅延ネットワーク
 (3)企業の機微データ(機密情報のようなセンシティブ情報)を守るセキュリティとデータ主権注6への配慮
 (4)工場、自動車、ロボットなどエッジ端末まで含めた柔軟な設計

図3 AI活用の進展に伴うコンピューティング・インフラの変化

出所 NTT株式会社「NTTのAIネイティブインフラ」


注4:AIワークロード:AI Workload。AIシステムを運用するために実行される計算処理など、負荷の作業量。
注5:出所 NTT株式会社「NTTのAIネイティブインフラ」 の4ページ
注6:データ主権:Data Sovereignty。自国の法制度によってデータを管理・保護し、外国の規制による不当な介入や利用を防ぐ枠組み。

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