AIOWNの全貌

AIOWNの全貌

〔1〕AIOWNの主な特徴

 AIOWNの基本設計は、AI活用の高度化に伴って発生する、各種の課題に対する回答ともなっている。

(1)高密度ラックの発熱対策
 GPUの高性能化によって1ラックあたりの必要電力量は激増し、それによる発熱量の増加で、従来の空冷方式による対応はもはや限界に近づいている。
 そこでNTTは新たに「液冷方式」の導入を加速させている。最新のデータセンターでは、GPU搭載サーバを高密度に実装し、ラック単位での液冷利用を可能にすることで、1ラックあたり最大135kWの電力消費に対応。冷却用電力を空冷方式に比べて最大60%削減している。
 同社はこの液冷方式に対応した設備を、すでにグローバルで250MW超提供しており、トップレベルのサプライヤーとなっている。
 この液冷データセンターサービスは、最先端半導体企業「ラピダス」注7の設計・開発基盤に採用されている。

(2)データセンター・サーバ間の低遅延
 AI推論は、分散した複数のサーバが連携して処理を行うケースが増えており、その際のデータセンターやサーバ間の通信遅延が処理性能を左右する。NTTが独自開発したPEC(Photonics-Electronics Convergence、光電融合)技術によるインターコネクト(相互接続)は、電気信号を光信号のままで扱うことで、従来の電気配線では不可能だった「超低遅延」「大容量」「低消費電力」を同時に実現する。IOWN 1.0(PEC-1)では主要都市間ネットワークを、IOWN 2.0(PEC-2)ではサーバやボードなどコンピューティング領域へ拡大し、2027年度までに47都道府県で800Gbps級のAPN基盤を整備する計画だ(図4)。

図4 IOWNにおける光電融合インターコネクト/ネットワーク

(3)ソブリンAI
 政府や医療機関、企業などがAIを活用する際、データを海外のクラウドサーバに預けることにはリスクが伴う。NTTは「技術主権」「データ主権」「運用主権」の3層でソブリンティ(データ主権)を提供できるとしている。
 国内トップシェアのデータセンターと閉域ネットワーク、自社開発のプライベートクラウド、NTT開発による国産のAI大規模言語モデル(LLM)「tsuzumi」(つづみ)、そして業界別のソリューション、これらすべてのレイヤを、NTTは国内完結・自社完結で提供する。

(4)エッジ対応
 AIの活用領域が工場、倉庫、自動車、ロボットなどのフィジカル空間に広がるにつれ、都市型の大規模データセンターだけでなく、現場の近くでリアルタイム処理できる分散型インフラが不可欠になる。NTTはコンテナ型データセンターや通信センター内の現場通信拠点を組み合わせ、郊外型、都市型、コンテナ型、企業拠点内、自動車やロボットまでを連続した1つのインフラとして管理する「分散基盤最適化」を推進している(図5)。

図5 NTTが提供する分散基盤の最適化

NPU:Neural Processing Unit、ニューラルネットワーク処理装置。AI処理や機械学習に特化した専用のプロセッサ。ニューラルネットワークとは、人間の頭脳の動きを模倣して、データをAIに処理させるアルゴリズム(演算処理)の1つ。
出所 NTT株式会社「NTTのAIネイティブインフラ」

(5)AI向けネットワーク
 AI利用に必要な各機能をつなぐのがネットワークサービス「Network as a Service」(NaaS)だ(図6)。特徴は2つある。
 1つは帯域の柔軟性。分単位・10Mbps/100Mbps単位での変更に対応し、変動するAIワークロードの通信需要にリアルタイムで追随できる。
 もう1つは、接続するだけで脅威を検知・遮断するセキュリティ機能をネットワークに組み込んだこと。これは日本初かつ特許取得済みの技術という。
 米国の大手IT調査会社ガートナーが2025年10月に発表したEye on Innovation Awards APAC(アジア太平洋地域における革新的技術)部門において、NTTドコモビジネスが提供するNaaSが、日本企業として初めて最優秀賞に選出されるなど、評価を得ている。

図6 AI向けネットワークサービス「NaaS」の役割

〔2〕AIOWN実現に向けたデータセンター網の整備

 AIOWN実現の一環として、NTTでは日本列島全体に大規模なデータセンター網を築こうとしている。
 現在、NTTグループ各社が国内で運営するデータセンターは、47都道府県160拠点以上、データセンターの処理能力規模(IT電力容量)の合計は約300MWに達している(表1)。この圧倒的な既存基盤を起点に、NTTは2033年度までにIT電力容量を現状の3倍超となる約1GWへと拡張する計画を打ち出した。
 拡張は単なる量的拡大ではない。「都市型」「遠隔地型」「郊外型」という異なる役割をもつデータセンターを組み合わせることで、AIの「学習から推論まで」あらゆる用途に対応する多層的な基盤を構築する設計になっている。
 例えば、品川区DC(データセンター)は都心のネットワーク結節点に液冷標準DCを置くことで、低遅延が欠かせないAI推論処理に対応する。また、栃木TCG11DC(ToChigi 11データセンター)は首都直下型地震や大規模停電リスクを意識した地理分散拠点として機能し、「デジタルインフラの国土強靭化」への貢献という意味合いももつ。また、千葉県の印西市や白井市にまたがる印西・白井キャンパスでは、近隣と合算して約250MWという別格の規模で、白井市との「地域活性化に関する包括連携協定」を通じ、NTTが「地域共生型の社会インフラ企業」としての役割を果たす。

表1 主なデータセンターの概要

出所 NTT株式会社「NTTのAIネイティブインフラ」の22〜25ページをもとに作成


注7:ラピダス:Rapidus。2022年8月に設立された半導体製造会社。製造拠点は北海道千歳市。

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