ペロブスカイト太陽電池の型式認証と国際標準化戦略

ペロブスカイト太陽電池の型式認証と国際標準化戦略

〔1〕型式認証の現状と次世代デバイスへの拡張

 太陽電池モジュールを一般市場へ流通させるには、設計適格性や安全性を担保する「型式認証」の取得が必須である。既存の結晶シリコン等の市販品については、IEC 61215(設計適格性)およびIEC 61730(安全適格性)に準拠した評価手順が確立されている。
 しかし、新規デバイスであるペロブスカイト太陽電池には専用の型式認証規格がいまだ存在しない。こうした中、英国のOxford PV社注10などからの提案に基づき、「IEC 61215-1-6 ED1」としてペロブスカイト向け型式認証規格の策定プロジェクトが発足し、2026年4月に正式な活動が開始された注11
 従来の太陽電池の型式認証プロセス(IEC 61215-1-x)において、ペロブスカイトは次のように、既存の4技術(Part 1-1~Part 1-4)に続く「5番目の技術」として、国際規格体系への仲間入りを果たそうとしている(表3)。
 ・Part 1-1:結晶シリコン
 ・Part 1-2:テルル化カドミウム(CdTe)注12
 ・Part 1-3:薄膜アモルファスシリコン
 ・Part 1-4:薄膜CIGS系注13
 ・Part 1-6(ED1):メタルハライドペロブスカイト系(新規追加)

 

表3 太陽電池の性能評価法が関連するIEC規格(型式認証)

出所 国立研究開発法人産業技術総合研究所 吉田 正裕 氏(再生可能エネルギー研究センター 太陽光評価・標準研究チーム)提供資料をもとに編集部作成

 

〔2〕技術の優位性をどう守るか:国際標準化を巡る各国の思惑

 日本国内では、産総研や実用化開発メーカーが参画する「国際標準化等検討委員会」注14や、JEMA(日本電機工業会)の専門委員会等において標準化の議論が進められている。
 しかし、「国内企業の間には、各企業における事業戦略の相違もあり、“必ずしも国際規格の早期策定・発行を急ぐべきではない”との慎重論も存在しています」と吉田氏は語る。
 その理由は、結晶シリコン太陽電池の歴史に見られる市場競争の教訓にある。技術が十分に成熟する前に標準規格を固定化してしまうと、低コストで大量生産を行う海外勢がその規格をクリアした安価な製品を大量に市場へ流入させ、瞬時に激しい価格競争(コモディティ化)に陥るリスクがあるためだ。
 したがって、日本産業界としては安易な規格の共通化を避け、自社技術の優位性を保護できる規格内容を目指す戦略的ネゴシエーションが求められる。一方、独自技術の先行開示やライセンスビジネスを狙う欧米企業は早期の規格化を望んでおり、国際交渉における駆け引きが活発化している。


注10:Oxford PV社:結晶シリコンとペロブスカイトを積層する「ペロブスカイト・タンデム技術」の世界的リーダー。https://www.oxfordpv.com/
注11:2026年4月の新規提案承認時点で、英国をはじめ、中国、日本、米国、ドイツ、等の主要国がプロジェクトに参加。
注12:CdTe:Cadmium Telluride、カドミウムテルル。カドミウムとテルルで構成される化合物薄膜半導体。欧米を中心に地上設置型での実績が多い。
注13:CIGS:銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)の4元素からなる化合物薄膜半導体。
注14:国際標準化等検討委員会:ペロブスカイト太陽電池の実用化に向け、グリーンイノベーション(GI)基金の実施事業者を中心に2024年3月にGI基金基盤技術開発事業内に設置された官民連携の委員会(産総研が事務局)。

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