日本の強みを世界へ:ペロブスカイト実用化へのマイルストーン

〔3〕実環境での長期耐久性を担保する「新・信頼性試験」の必要性

 ペロブスカイト太陽電池は従来の結晶シリコンと材料・物理特性が大きく異なるため、既存の加速劣化試験のみでは実環境における10~20年以上の長期耐久性を担保できない懸念がある。学術的知見(ISOS Protocols注15等)を踏まえ、以下の固有の劣化要因に対応する試験方法の確立が進められている。
 (1)「光照射」と「熱(高温)」の複合劣化試験
 ペロブスカイトは「光照射下かつ高温環境」において耐久性に課題があるとの報告がある。そのため、発電に伴う出力低下や不活性化を防ぐため、光・熱の複合ストレス耐久性評価の規格化が提案されている。
 (2)製造工程における機械的ダメージの評価
 個々の素子を極薄の短冊状に直列接続する薄膜モジュール特有の構造に起因し、製造プロセスの機械的加工によるダメージや、界面欠陥が長期信頼性に及ぼす影響を評価する手法が重視されている。

〔4〕日本と諸外国における開発アプローチと市場戦略

 日本と海外では、ペロブスカイト太陽電池のターゲット市場と技術アプローチにおいて明確な戦略的相違が見られる(表4)。

表4 日本と諸外国における開発アプローチと市場戦略

出所 編集部作成

 

〔4〕日本と諸外国におけるターゲット市場と開発アプローチの相違

 日本と海外では、ペロブスカイト太陽電池のターゲット市場と技術アプローチにおいて明確な戦略的相違が見られる(表2)。
 (1)日本国内の戦略
 適地への太陽光発電所の導入が限界に近い国内事情を踏まえ、政府主導で「軽量フレキシブルなフィルム型」によるビル壁面や耐荷重の低い屋根など、新たな設置場所の開拓を軸に据える開発アプローチがまずは取られている。一方で、GI基金事業でも「タンデム型」技術開発が開始されるなど高い変換効率、既存とのリプレースを見据えた技術アプローチも取られている。
 (2)海外(欧州・中国等)の戦略
 結晶シリコンのサプライチェーンにおいて圧倒的な市場シェアを占める中国や、高効率化を狙う欧州(Oxford PV等)は、既存の地上設置型や大型発電システムのリプレースを見据え、変換効率30%以上を目指す「タンデム型」や「大型ガラス基板型」に開発リソースを集中させている。

〔5〕国内の社会実装を加速させる補助制度と各種ガイドラインの整備

 国内の社会実装を促すため、環境省および経済産業省の補助制度による軽量フィルム型モジュールの導入支援が本格始動している。これに伴い、一般財団法人電気安全環境研究所(JET)は補助対象製品を指定するための「内部試験規格」を迅速に策定した。
 あわせて、JEMAによる「業界ガイドライン」やNEDOによる「設計・施工ガイドライン」の整備が一体的に推進されている。さらに、2026年5月15日には産業界の普及を牽引する団体として「日本ペロブスカイト普及促進協議会」(JPSC)注16が設立され、民間主導の社会実装体制も強固になっている〔特集 第1部(その1その2)および第3部を参照〕。

日本の強みを世界へ:ペロブスカイト実用化へのマイルストーン

 最後に吉田氏は、今後の展望について次のように語った。
「日本国内のメーカーは、JEMAの専門委員会にて合意されたガイドラインの内容を踏まえて、自社技術の優位性を確保する『自社の強みを活かせる評価手順』を検討いただき、IEC/TC82へ日本案として積極的に提案していく必要があります」
 
 産総研が推進する「出力計測」や「信頼性評価技術」の開発成果は、これら国内での早期社会実装(JEMA/JET基準)と国際ルールの主導権獲得(IEC規格化)を、技術面から直結・補完するための極めて重要な鍵を握っている。

特集 第3部に続く)


注15:ISOS Protocols:International Summit on Organic PV stability (ISOS)、M. V. Khenkin et al., Nature Energy, 5, 35-49 (2020)
注16:https://www.jpsc.or.jp/

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