IOxを利用した実際の事例
最後に、IOxを使用して、実際にはどのようなことが実現可能なのであろうか。ギド・ジュレ氏の説明の後に行われたパネルディスカッションの中で、シスコシステムズ バイスプレジデントIoTバーティカルビジネス担当のトニー・シャキブ(Tony Shakib)氏(写真4)は、IOxが実現する具体例として、同社がサンフランシスコで実証を行ったスマート交通システムの事例を紹介した。
このスマート交通システムは、交通渋滞が多く発生するサンフランシスコにおいて、救急車が迅速に病院へ到着できる環境を、IOxを搭載したデバイスとフォグコンピューティングによって実現したものである。このシステムでは、都市インフラの管理網を利用し、救急車が近づくと信号機を赤から青に変えて、救急車による患者がいる現場までの到着と病院への搬送を迅速に行えるようにした(図7)。また、救急車内から患者の心拍数、呼吸数の情報や画像を病院に送信することができるため、救急車の到着を待つ病院でも、あらかじめ状態を把握できるようになる。
同氏は、例えばこのスマート交通システムのように、IoT/IoE時代においては、生成される膨大なビッグデータの中から、目的に無関係な99%のデータではなく、1%の有益なデータをいかに活用するかが重要になると言う。そのためにIOxを展開していきたいと述べた。
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以上、シスコのフォグコンピューティング構想と、それを実現するためのIOxの機能が目指すところを紹介してきた。同社が提唱するIoE時代の到来はまだ先のことかもしれないが、急速に整備されはじめているIoTのプラットフォームにおいて、各企業は、あらゆる機器がネットワークにつながった時に、自社で得られるデータの種類と、そのデータに対してどのような分析や処理を行うと収益の向上が図られるか、もしくはコスト削減につながるのか、その可能性をシミュレーションしておくことが重要であると考えられる。
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