韓国(ソウル)、スイス(ジュネーブ)での分散開催
SG6ブロック会合とは、ITU-R内で放送サービスを所掌するSG6ならびにその傘下のWP(作業部会)会合を集中的に合同開催するものである(注)。
通例では春と秋の半年に1回、ITU本部のあるジュネーブで開催されているが、今回は韓国からの招聘に応じ、大部分のWP会合を8月22日〜9月4日の期間、ソウルで開催した。その一方で、2007年10月〜11月に開催予定のWRC-07(国際無線通信会議)に向けた準備の都合上、WP6E(地上伝送を担当)の一部の周波数関連課題、そしてSG6会合については、2006年9月11日〜19日まで、ジュネーブで開催するといった変則的な日程となった。
余談ではあるが、ソウルラウンドでは、会合参加者に対して韓国の地上モバイル放送「T-DMB」端末を無料で貸与し、実際に体験してもらうキャンペーンが実施されるなど、本会合招致に対する韓国の熱意が大いに感じられる会合でもあった。
(注)SG6ならびにその傘下のWPの構成および担当分野については、「デジタル放送の標準化動向(1)」を参照のこと。また、ITU組織図が(財)日本ITU協会のサイトに掲載されている(http://www.ituaj.jp/03_pl/itu/sosikizu.pdf )。
携帯端末向けマルチメディア・データ放送の審議は先送りに
=FLO方式の手続きの遅れが審議空転の一因=
今回のトピックの1つとして、日本のワンセグ、欧州DVB-H、韓国T-DMBをはじめとする「携帯端末向けマルチメディア・データ放送」に関する勧告化作業が完了しなかったことが挙げられる。
本件は、前回のSG6会合(2006年3月)において、担当するWP6Mでいったん承認された新勧告案が、主にオーストラリアの反対によって差し戻され、再度WP6Mの審議対象となった案件である。
WP6M会合では、オーストラリアからの修正コメントや、関連するWP6S、WP6Eからのコメントなどをもとに、本会合での勧告化に向けた勧告案の修正作業を開始した。関連するWP6S、WP6Eからのコメントも修正内容に加えられたのは、新勧告案に記載する内容が、マルチメディア・データ放送のレイヤのみならず伝送レイヤを含むことからである。
修正作業は、当初、この勧告案でNormative(必須文書扱い)に位置付けられている、「ISDB-T」「ISDB-Tsb」「ITU-R勧告BS.1547 System E」「DVB-H」「T-DMB」の5方式については変更することなく進められた。しかし、WP6Mの会合最終日になって、Appendix(Informative、すなわち必須でない情報文書扱い)に位置付けられていたFLO方式(いわゆるMedia FLO)を、Annex(Normative、すなわち必須文書扱い)に格上げする提案が米国よりなされた。そのため、審議が空転し、結論として新勧告案(修正案)をSG6に提案することができず、次回のWP6M会合(2007年4月予定)まで審議が先送りされることとなった。
FLO方式は、公的な公開規格ではないとの位置付けから、これまではAppendixに位置付けられていたが、つい先日、米国TIA規格(規格番号:TIA-1099)として承認された。しかし、今回のWP6M会合への入力文書締切日までにFLO方式のAnnexへの格上げ提案が提出されず、公式な入力文書なしにAnnexへの格上げの審議が行われる事態となり、それが審議空転の一因となったことは残念である。
なお、TIA-1099は、主にFLOの伝送方式部分を規定しており、新勧告案で扱うべきマルチメディア・データ放送レイヤについては規定されていない。そのため、次回のWP6M会合での議論も紆余曲折が予想される。