伊藤忠商事、九州電力、国際石油開発帝石の3社は2017年3月22日、インドネシアのスマトラ島北部に建設中の地熱発電所「サルーラ地熱発電所」が一部完成し、営業運転を始めたと発表した。この発電所は地熱資源開発から地熱発電所建設、営業運転、電力会社への売電まで一貫して実施する「サルーラIPP地熱プロジェクト」の一環として建設したもの。伊藤忠商事、九州電力、国際石油開発帝石は、インドネシアの電力会社PT Medco Power Indonesia社と、地熱発電向け発電設備を開発販売しているアメリカOrmat Technologies社と共同でこのプロジェクトに出資している。出資比率は伊藤忠商事と九州電力が25%ずつで、PT Medco Power Indonesia社が18.9975%、国際石油開発帝石は18.2525%、Ormat Technologies社が12.75%。
発電所の建設地はインドネシアの首都ジャカルタの北西に位置するスマトラ島北部。北スマトラ州のサルーラ地区だ。インドネシア第4の都市であるメダンから南へおよそ350km離れている。インドネシア国有石油会社の子会社であるPT Pertamina Geothermal Energy社保有の地熱鉱区を探索、開発し、発電所建設を計画した。
図 発電所の建設地
出所 伊藤忠商事
計画では、出力およそ110MWの地熱発電設備を3系統建設し、合計出力を約320.8MWとすることになっている。今回は3系列のうちの1つが完成し、営業運転を開始した。発電した電力は30年にわたってインドネシア国有の電力会社であるPerusahaan Listrik Negara(PLN)社に売電する契約を締結済みだ。
この発電所の発電設備には、東芝とOrmat Technologies社の製品を採用した。東芝が、地熱流体が発生させる超高温の蒸気で直接タービンを回して発電する「フラッシュ発電」の設備を担当し、Ormat Technologies社はフラッシュ発電で利用して温度が下がった蒸気で発電するバイナリー発電の設備を担当した。地熱を2回活用することで高い発電効率を発揮させる計画だ。地熱発電の「コンバインドサイクル」とも呼べる。実際、Ormat Technologies社は今回の発電所に投入した発電設備をまとめて「Geothermal Combined Cycle Unit(GCCU)」と呼んでいる。
図 完成し、営業運転を始めた部分の全景
出所 東芝
国際石油開発帝石によれば、2017年中に2系統目が、2018年中に3系統目が完成し、営業運転を開始する予定になっている。完成して、出力が約320.8MWとなれば、1カ所に集中して建設した地熱発電所としては世界最大規模のものになる。
インドネシアは国土に火山を多く抱えるため、地熱資源が豊富だ。独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機(JOGMEC)によると、その資源量は世界第2位の約2700万kWとの見込みだ。ちなみに日本の地熱資源量は約2300万kWで、世界第3位となっている。1位は世界最大規模の地熱地帯(ザ・ガイザーズ地熱地帯)を抱えるアメリカで3900万kWだ。インドネシアは国として2025年までに地熱による発電設備の合計出力を950万kWまで引き上げる目標を掲げている。世界に比べると日本は多くの地熱資源を抱えているにもかかわらず、地熱発電に向けた地熱資源の開発が進んでいない。今後の日本における地熱資源の開発に期待したい。