福島県沖地震:マグニチュード7.4
〔1〕東京で210万戸、東北16万戸が停電
福島県沖で、深さ57km地点で、マグニチュード7.4、最大震度6強(宮城県の登米市など5つの市町村、表1参照)が発生(2022年3月16日の23:36)し、表2に示す、火力発電計14基(647.8kW)が発電を停止した。
表1 マグニチュード7.4(最大震度6強)の福島県沖地震の発生と停電状況
出所 気象庁「令和4(2022)年3月16日23時36分頃の福島県沖の地震について(第2報)」、令和4年3月24日をもとに編集部で作成
表2 2022年3月16日の福島県沖地震を受けた火力発電所の停止状況(2022年3月23日時点)
出所 資源エネルギー庁「2022年3月の東日本における電力需給ひっ迫に係る検証について」、第46回電力・ガス基本政策小委員会・資料3-1、2022年3月25日、の6ページ
これらの発電所の停止に伴い、ブラックアウト(大規模停電)を防ぐために、UFR(系統周波数低下保護装置)注2が発動したため、これによって、
- 東京電力エリアで最大約210万戸
- 東北電力エリアで最大約16万戸
の停電が発生した(2022年3月16日 23:50時点)。
〔2〕URFによる遮断を解除し停電を解消へ
停電後、東京電力エリアでは、運転稼働中の火力発電の出力増加(焚き増し)や、揚水発電注3を稼働させることによってURFによる遮断を解除し、さらに地震による配電や送変電設備の被害箇所を改修することによって、停電を解消した(3月17日2:52)。
一方、東北電力エリアでは、北海道電力エリアや東京電力エリアからの電力融通注4(3月17日2:30~11:00)や運転稼働中の火力発電の出力増加(焚き増し)などによって、URFによる遮断を解除し、配電・送変電設備の被害カ所を改修することによって、停電を解消し(3月17日21:41)、安定供給に最低限必要な予備率3%注5を確保できた。
▼ 注1
資源エネルギー庁・電力・ガス基本政策小委員会、「2022年3月の東日本における電力需給ひっ迫に係る検証について」(2022年3月25日)
▼ 注2
UFR:Under Frequency Relay、系統周波数低下保護装置。「周波数低下リレー」ともいわれる。地震などの緊急時に、周波数(東日本:周波数50Hz)の低下を検出して、負荷(一般家庭への電力供給など)を自動的に遮断することで、周波数低下による波及的な事故を防止する装置。
▼ 注3
揚水発電:水力発電の一種。余剰電力がある夜の時間帯などに、高所の貯水池(上部の調整池)に、下部の調整池から水をくみ上げて貯めておき、電力が必要な時に水を落下させて発電機を回し発電する方式。一種の蓄電施設。
▼ 注4
電力融通:電力会社間で電力の供給力不足等を補うため、地域間連携線(各電力エリア間をつなぐ送電線)を通して、自社で余裕のある電力を他社に提供(融通)すること。
・[3月17日2:30〜6:00]東北エリアへ最大140万kW(北海道エリアから30万kWを、東京エリアから110万kWを融通した)。
・[3月17日6:00〜11:00]東北エリアへ最大100万kW(北海道エリアから10万kWを、東京エリアから90万kWを融通した)。後出の図2参照。
▼ 注5
予備率(供給予備率):翌日の電力供給の余力のこと。電力需要のピークに対して、電力会社の電力の供給力に、どの程度の余裕(kW)があるかを示す指標。2011年3月11日の東日本大震災による原発事故などによって、電力需給がひっ迫したことから、翌2012年に導入された制度。この予備率が、電力の安定供給のために最低限必要とされる3%を下回る見通しになった場合に政府が発令し、家庭や企業に対して広く節電を呼びかける。