[特集]

VPP(仮想発電所)とは何か? 海外動向とビジネス展開の可能性— 前編 —

2016/08/03
(水)
SmartGridニューズレター編集部

海外事例に見るVPP

〔1〕SOFC分散電源によるオランダのVPPプロジェクト

 図2は、IBMが参画しているオランダでのプロジェクト例である。

図2 SOFC分散電源によるVPPプロジェクトの例(オランダ)

図2 SOFC分散電源によるVPPプロジェクトの例(オランダ)

出所 IBM仮想発電所(VPP)ソリューション資料より、日本アイ・ビー・エム株式会社、2016年5月11日

 オランダ、アーメラント島(人口3,500人)では、2020年までに島内のCO2排出量ゼロを目指したプロジェクトを2013年から開始している。同島では、基本的に太陽電池と燃料電池から電力と熱をまかない、系統電力はバックアップという位置付けである。6MWの太陽電池と45台の燃料電池を使用し、SOFC注8(燃料電池)と再エネを組み合わせた需給調整とグリーンエネルギーの利用効率を向上させるVPPである。参加企業はBlueGen(燃料電池メーカー)、Alliander(電力会社)、Ceramic Fuel Cells Limited(燃料電池の提供)、IBM(IT技術、ソリューション)の4社で、プロジェクト費用は約2.6億円である。ここでの例は、前出の図1の(3)の分類に相当する。

 同プロジェクトでは、以下を目的にプロジェクトを実施している。

(1)VPPの基本機能である電気の流れ、金の流れ、データの流れの予測と最適化

(2)大規模集中のエネルギー供給から小規模分散エネルギー供給への技術支援

(3)不安定な再生可能エネルギーの最大利用と燃料電池の制御

(4)エネルギー地産地消の料金体系策定と消費者(需要家)との連携

 具体的な4つの利用例(ユースケース)を、図2に示す。

〔2〕ドイツ・Next Kraftwerke(ネクスト・クラフトヴェルケ)のVPP事業

(1)再エネ発電所でVPPの実ビジネスを商用化

 ドイツのネクスト・クラフトヴェルケ(Next Kraftwerke)社は注92009年に設立されたVPP事業者で、同社は、大規模バーチャル・パワープラント(VPP)を運営し、スポット市場注10で電力取引を行っている。数百の再エネプラント(発電所)がすでにネットワークを介してつながっており、各地に分散する発電所と、同社のVPP「ネクスト・プール(Next Pool)」の中央制御システム間で、データ交換が可能となっている。

 「ネクスト・プール」は、各地に分散した中規模発電所のネットワークで、発電所にはバイオマス利用型、熱電併給(コジェネ)ユニット、ウィンドファーム(集合型風力発電所)、太陽光発電所などが含まれる。ネットワークの一部は同社VPP中央制御室を通じて一部操作されているが、基本的には各発電所の管理運営と所有はそれぞれ独立している。これによって同社は、各発電所の能力を柔軟に活用して、エネルギー市場間のバランス維持に貢献している。

 さらに、電力取引所スポット市場において、ネットワーク化された発電所が生産する総合的な電力売買も行っている。VPP操業データ、最新気象情報、グリッドデータ、リアルタイムの市場データなど、さまざまな情報を複合的に活用することで従来にない新しいビジネスを創出している。

(2)1,000MWの容量を確保・制御するNext Boxとコントロールシステム

 同社の主なVPP事業の概要は、「Next Box」と呼ばれる通信機能付コントローラを計2,400箇所の分散電源に設置し、各分散電源をオンラインで接続することで、1,000MWの電力容量を確保している。

 コントロールシステムは、VPPの中核的な技術で、Next Box経由でVPPに接続されている何千もの分散発電装置や消費者(スマートハウスなど)の機器から、M2Mネットワークを用いてデータを収集しコントロールする。

 同社は、電力需給家(Prosumer)との間で電力販売に関する委託契約を締結し、スポット市場での電力販売や、系統運用者が行う予備力オークションにおいて、セカンダリー・リザーブ(5分以内に応答)やターシャリ・リザーブ(需給変化に応じて手動で応答)の提供を行うことでマネタイズする。獲得した収入は、委託契約に基づき、分散電源保有者とシェアするという仕組みである。


▼ 注8
SOFC:Solid Oxide Fuel Cell、固体酸化物型燃料電池のこと。

▼ 注9
ネクスト・クラフトヴェルケ(Next Kraftwerke)社:2009年設立。売上:1億8,400万ユーロ(2014年)、電力取引量:9TWh、設備:2700再生可能エネルギーユニット。総発電容量:1700MW。従業員:110名。https://www.next-kraftwerke.com/facts

▼ 注10
スポット市場(Spot Market):電力取引の形態の1つ。契約と同時に現物の受け渡しを行う取引のことを指す。一般に原油・石油製品・電力などの取引で、長期契約と区別した当用買いをスポットといい、特に電力市場では、前日市場や当日(時間前)市場もスポット市場に分類される。

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