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国際比較:各国の炭素税率の推移

― JCLPがカーボンプライシングの早期導入に向けて意見書を提出!―

国際比較:各国の炭素税率の推移

〔1〕炭素税が上ると、経済成長に打撃を与えないか

 これまで、日本のカーボンプライシングの動向を見てきたが、日本では、明示的カーボンプライシングの導入に対して、企業の成長を阻害するという視点からの慎重論も出されている。

 そこで、炭素税率の国際的な導入動向を見てみる。

 図7に、主な炭素税導入国の税率の推移および将来の見通しを示すが、実際、日本は図7の最下位に示す赤線のように、すでにかなり高い明示的カーボンプライシングを導入している他の国々に比べると、地を這うような低い税率になっている。すなわち、日本では、まだ経済成長に対して心配する(影響を与える)ほどの環境税(炭素税)が導入されているわけではない。

図7 国際比較:主な炭素税導入国の税率の推移

図7 国際比較:主な炭素税導入国の税率の推移

(注1)税率が複数ある国については、フィンランドは輸送用燃料の税率(2011年〜2017年)、スウェーデンは標準税率(1991年〜2017年)、デンマークは標準税率(1992年〜2010年)の税率を採用(括弧内は税率が複数存在する期間)。
(注2)為替レート:1CAD=約88円、1EUR=約127円、1CHF==約117円、1DKK=約17円、1SEK=約13円(2015〜2017年の為替レート(TTM)の平均値、みずほ銀行)。
(出典)みずほ情報総研
出所 諸富 徹「カーボンプライシングとは何か〜その経済成長への影響」、JCLPメディア・ブリーフィング、2021年7月28日

 図7から、スウェーデンをはじめスイス、フランスなどの炭素税導入国では、日本よりも炭素税率が高いだけでなく、時間とともに、順次、税率の引き上げも行われている。このため、各国の2017年頃に示す右上がりの傾向のグラフを見ると、このまま炭素税が上昇すると、今後、経済成長に打撃を与えないか、という不安や懸念もある。

〔2〕日本はCO2の削減率も、GDP成長率も低い

 しかし、実際の世界各国の統計を見てみると、図8に示すように、日本が京都議定書注4を締結した2002年から2015年の13年間の累積で、

  1. スイスは、CO2の削減率-8.3%に対してGDP成長率は122.6%、
  2. 英国は、-27.2%に対してGDP成長率は62.6%
  3. 米国は、-7.6%に対してGDP成長率は64.3%
  4. フランスは、-15.9%に対してGDP成長率は60.7%
    というように、経済成長(GDP成長率を伸ばす)しながら、同時にCO2を削減していることがわかる。これら世界の例を日本のケース(図8の左)と比較すると、
  5. 日本は、CO2の減少も低く(-4.8%)、経済成長(GDP成長率)も低い(6.5%)
    という残念な結果になっている。

図8 温暖化対策は経済成長にマイナスか?

図8 温暖化対策は経済成長にマイナスか?

(出典)GHG排出量:UNFCCC「Time Series - GHG total without LULUCF, in kt CO2 equivalent」、名目GDP:IMF「World Economic Outlook Database, April 2017 - Gross domestic product, current prices, U.S. dollars」
出所 諸富 徹「カーボンプライシングとは何か〜その経済成長への影響」、JCLPメディア・ブリーフィング、2021年7月28日


▼ 注4
京都議定書(Kyoto Protocol):1997年12月1日〜10日の期間、京都の国立京都国際会館で開催されたCOP3(気候変動枠組条約第3回締約国会議)で、1997年12月に採択された、気候変動への国際的な取り組みを定めた条約。2005年(平成17年)2月16日に発効された。日本は、2002年6月に京都議定書を締結した。

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