ITU-T勧告:NGNリリース1の全体構成
—よくNGNリリース1といわれますが、リリース1にはどのような勧告があって、どんな骨格になっているのでしょうか。リリース2も計画されているようですが
村上 現段階(2007年2月)でのITU-TのNGNに直接関係する勧告の文書一覧を表2に示します。ここでは詳しく述べませんが、NGNリリース1につきましては、表2に示すように、2006年12月までに、NGNアーキテクチャを中心に13個の勧告文書が制定され、一部プロトコルも含めたそのほか7個の文書が既に完成しており制定手続きに入っております。
すなわち、ITU-TではNGNの全体の骨格であるアーキテクチャが決まったところなのです。そのうちのサービスについては、先ほど森川先生おっしゃられたように、リリース1では電話(IP電話)中心のサービス(NGNでは、前述のPSTN/ISDNのエミュレーション/シミュレーション・サービス)が最初に決まっています。現在、リリース2の議論も始まっていますが、リリース2の中には、映像・放送系のサービスであるIPTV(Internet Protocol Television)とか、ホーム・ネットワークなどの、新しいサービスが入ってくる予定です。
—先ほど森川先生から、NGNは電話系が中心であり、インターネットとそんなに違わないというお話もありましたが、例えば、村上さんがおっしゃったように、インターネットにはサービス・ストラタムのような機能はなかったわけですよね
森川 インターネットの場合は、NGNのサービス・ストラタムというようにキャリアがきちんとした形でサービスをしている訳ではありませんが、随時SIP(Session Initiation Protocol、セッション開始プロトコル)を搭載したIP電話サービスなどが実現されているなど、実質的にはサービス・ストラタムと同等な機能は用いられています。
—なるほど。必要に応じて開発されて、必要に応じて提供されているということですね
森川 その通りです。

村上 先ほど言いましたように、NGNはIPの技術をフルに活用しています。NGNにおける電話系サービスは、エミュレーションやシミュレーションと言う形でサービスを提供することになりますが、特にシミュレーションの場合の電話サービスではSIPを使っています。ここで、NGNアーキテクチャの標準化(プロトコルの標準化)というのは何をするのか、ということを説明しましょう。
NGNの標準化では、新しいプロトコルを1つずつ作っているわけではありません。例えば、SIPの場合ですと、インターネット技術の標準化組織であるIETFで標準化されているインターネット系のSIPプロトコルのどれを使用するか、複数事業者による相互接続の方法をどのように行うかなどを、きっちり決めてサービスを実現していくというのが、NGNのプロトコルの標準化の特徴なのです。すなわち、新しいもの(プロトコル)をつくり出すというよりは、今までインターネットなどで育んできた技術を、いかに新しいネットワークで使いこなすかというやり方が基本になっています。