非セルラーLPWAにおけるLoRaWANの位置づけ
〔1〕LPWAネットワークの伝送速度と通信距離の関係
図1は、米国カリフォルニア州にあるモバイル市場の専門調査会社Mobile Experts社が策定した、LoRaアライアンスのホワイトペーパーに紹介されたものである。この図1から、M2M/IoTデバイスを接続するLPWAネットワークの伝送速度と通信距離の関係を、概略的に俯瞰することができる。
図1 M2M/IoTデバイスを接続するネットワークの伝送速度と通信距離
BLE:Bluetooth Low Energy、低消費電力型Bluetooth 4.0
Weightless-P:Weightless SIG(Special Interest Group)が策定したLPWA規格。伝送速度200bps〜100kbps、通信距離2km。http://www.weightless.org/about/weightlessp
RPMA:Random Phase Multiple Access、米国Ingenu(アンジェヌ)社が開発したLPWA規格。2.4GHz 帯を使用。伝送速度60bps〜3.8kbps、通信距離30km
UNB:Ultra Narrow Band、超狭帯域通信。英国Telensa社が開発したLPWA規格。上り62.5bps、下り500bps。SIGFOXもUNBで通信を行う。
出所 https://www.lora-alliance.org/portals/0/documents/whitepapers/20160404JG_Mobile_Experts_Whitepaper_LoRa_Alliance.pdf、原典:Mobile Experts White Paper for LoRa Alliance
このうち日本では、3GPPで標準化されたNB-IoTやCat-M1などについて、免許必要周波数帯(ライセンスバンド)を使用するKDDIやNTTドコモはなどのモバイル通信事業者がすでに実証試験を開始している。
一方、免許不要の周波数帯(アンライセンス)を使用するLoRaWANについては、M2Bコミュニケーションズやソラコム(M2Bと戦略的業務提携)、ソフトバンク(2016年度中にサービス開始)が、SIGFOXについては京セラコミュニケーションシステム(2017年2月からサービス開始)が、実証実験やサービス構想を発表している注1。
このようなM2M/IoTネットワークに関するLPWAの新しい動向は、セルラーLPWA(図1の点線:免許必要の周波数帯)と非セルラーLPWA(図1の実線:免許不要の周波数帯)が、今後、ネットワーク市場においてどのように競合するのか、どのように共存していくのかという点で注目されている。
〔2〕LPWAにおけるLoRaLANの位置づけ
表1に示すように、日本では、920MHz(サブギガ帯)を使用する次世代無線技術LPWAの中でオープンなLoRaWAN方式は、省電力で長距離通信(15km)が可能な通信方式として注目されている。
表1 LoRa方式の位置づけ〔920MHz(サブギガ帯)の次世代無線技術LPWA中〕
HaLow:ヘイロー。IEEE 802.11ah規格をベースにした製品のWi-Fiアライアンスの名称(本誌2016年11月号参照)
出所 M2Bコミュニケーションズ「日本でのLoRaWANの展開」、2016年10月
以降では、LoRaWAN(通信システム規格)仕様とそのプロフィールや、これを普及促進するLoRaアライアンスについて最新動向を見て行こう。
▼ 注1
非セルラーLPWAであるLoRaWANやSIGFOXは、セルラーLPWAの標準化を策定している国際標準化組織である3GPP TSG(Technical Specification Group)にも提案され、審議・検討された経緯がある。
http://www.3gpp.org/DynaReport/TDocExMtg--GP-65--31298.htmを参照。