洋上風力発電:第1位英国、第2位ドイツ、第3位中国
〔1〕欧州勢だけで88%の導入
次に、急速に大容量化が進み、日本でも活発化している洋上風力発電(写真3)の市場動向を見てみよう。
写真3 世界的に普及し始めた洋上風力発電の例
出所 GWEC:Offshore wind power、
http://www.gwec.net/global-figures/global-offshore/
http://www.gwec.net/wp-content/uploads/2017/05/Global-Offshore-2016-and-Beyond.pdf
図10に示すように、全世界の洋上風力発電は、世界最大の導入を誇る英国(5,156MW、36%)をはじめ、ドイツ、中国、デンマーク、オランダ、ベルギー、スウェーデンなど、欧州勢を中心に伸びてきている。
図10 世界の国別の洋上風力発電累積容量: 2016年
出所 GWEC:Offshore wind power、
http://www.gwec.net/global-figures/global-offshore/
http://www.gwec.net/wp-content/uploads/2017/05/Global-Offshore-2016-and-Beyond.pdf
世界全体の洋上風力発電の累計容量は、2015年の12,167MW(12.2GW)から新たに2,219MWが導入され、2016年末には14,384MW(14.4GW)へと、18%以上も伸びている(図11)。一方、日本は、53MWから60MWへと13%の伸びであった。
図11 世界の年別の洋上風力発電の累積容量の推移(2011~2016年)
また、2016年末においては、欧州勢の英国、ドイツ、デンマーク、オランダなど10カ国に、洋上風力発電の合計14,384MWのうち、実に88%(12,631MW)が導入された。残りの12%に、中国、日本、韓国、米国が続いている注6。
〔2〕大容量化へ、陸上風力発電よりも安く
また、欧州では洋上風力発電(オフショア)の価格競争(MWh当たり)が激しくなってきており、陸上風力発電(オンショア)よりも安いという逆転現象が起こり、話題となっている。
この背景には、風力発電産業の成熟とともに、新世代といわれる出力8〜9MW級以上の大容量洋上風力などが次々に開発されていることなどが挙げられている注7。
例えば、三菱重工業とデンマークのヴェスタス社(Vestas Wind Systems A/S)が折半で出資する洋上風力発電設備合弁会社のMHIヴェスタス(MHI Vestas Offshore Wind A/S)は、2017年6月、これまで世界最大出力の洋上風力発電設備であった定格8.0MW(8,000kW)のV164-8.0MWを、さらに定格9.5MW(9,500kW)まで高出力化した新モデル「V164-9.5MW」を発表した注8。
このように発電出力を増やすことによって、さらなる洋上風力発電コストの低減を可能にしている。
表4に、日本の風力発電と洋上風力発電の導入状況と取り組みについて示す。
表4 日本の風力発電と洋上風力発電の状況
出所 表中の各サイトを参考に編集部作成
以上、世界風力会議(GWEC:Global Wind Energy Council)が発表した最新の2016年度の年間報告書“Global Wind 2016 Report”を中心に、世界の風力発電の導入状況を見てきた。太陽光発電と並ぶ再エネである風力発電は、アジア、欧州、北米が牽引して市場を拡大している。
風力発電のなかで、累積導入量では中国がダントツ1位の68,690MW(39.0%)、大容量化が進む洋上風力においては、2016年末には、洋上風力発電の合計14,384MWのうち実に88%(12,631MW)が、英国、ドイツ、デンマーク、オランダなど欧州10カ国に導
入された。
日本は、まだ3GW(前出の図2、3,234MW、0.7%)と世界の19位であるが、海に囲まれた日本の風力発電の可能性は大きい。実際、表4に示した各種資料、特に「JWPA:風力発電の現状とJWPAの取り組み(2017年3月1日)」を見ると、日本の洋上風力発電の開発は活発であり、今後、次々に稼働し始める予定となっている。
地球温暖化対策の面からも、エネルギー自給率向上の面からも、日本におけるクリーンな風力発電の普及は大きく期待されている。
▼ 注6
http://www.gwec.net/global-figures/global-offshore/
▼ 注7
GWEC Global Wind 2016 Report :OFFSHORE WIND