【第3回】米国のエネルギー政策②:エネルギー技術への連邦政府の支援を再定義したOBBBA(包括的な税制・歳出改革法)と関税政策(2ページ目)

〔5〕国内製造ボーナス/コミュニティ案件ボーナス

 一方で、IRAから続く「国内製造ボーナス」と「コミュニティボーナス」はOBBBAで維持された。これは特定の条件を満たすことで、ITC/PTCの税控除率が上乗せされる仕組みだ。それらを以下に示す。
 (1)国内製造ボーナス
 設備全体に占める米国内製造部品の割合が一定水準を超えると、税控除率が10ポイント上乗せされる。基準値は段階的に引き上げられ、2025年6月16日以降の案件では45%、2026年は50%、2027年は55%となる。
 (2)コミュニティボーナス
 低所得者層の居住地や先住民コミュニティに建設された案件が対象。こちらも10ポイントの上乗せが可能となる。

〔6〕住宅用機器の支援は打ち切り

 IRAでは、次のように住宅用機器を対象とした税控除も充実していた。
 (1)太陽光発電や蓄電池などを対象とする「住宅クリーンエネルギー税控除」
 (2)断熱や高効率機器の導入を支援する「高効率住宅改修税控除」
 (3)EV充電器に適用される「代替燃料車燃料供給税控除」
 これらはいずれも2032年まで満額継続予定だったが、OBBBAで大幅に前倒し終了となった。住宅クリーンエネルギー税控除と改修税控除は2025年末まで、EV充電器の優遇も2026年6月末までに設置した案件で打ち切りとなる。

〔7〕製造設備への支援は維持しつつ条件を厳格化

 IRAでは、PTCは〔2〕、〔3〕で先述した発電設備に適用されるだけでなく、エネルギー関連機器の製造設備向けにも「高度製造生産税控除」として適用可能であった。その対象は太陽光発電、風力発電部品、インバーター、電池材料、蓄電池、重要鉱物など広範囲に及ぶ。
 2029年末まで満額供与され、2030年から2032年まで段階的に縮小される仕組みであった。しかし、OBBBAでは以下の5つの変更が加えられた。
 (1)重要鉱物は期間が1年延長され、2030年末まで満額、2031年から2033年まで段階的縮小
 (2)風力発電部品は2027年末で前倒し終了注5 
 (3)「製鋼用原料炭(Metallurgical Coal)」を重要鉱物に追加(2029年末まで)
 (4)その他、蓄電池モジュールや一体型部品の要件を追加
 (5)2026年以降は製造設備にも「禁止外国組織排除要件」を適用

〔8〕対中デカップリング色を鮮明にしたOBBBA

 OBBBAは、太陽光・風力・EVへの支援を縮小する一方、蓄電池や原子力などの技術は支援を継続した。加えて、製造設備向け優遇も風力部品を除けば維持され、米国内製造業の強化に力点を置いている。
 OBBBAは全般にわたって「禁止外国組織排除要件」が貫かれており、対中デカップリング色が一層鮮明になったといえる。


注4:定置用蓄電池:住宅や病院、工場などに固定して設置される大容量の蓄電池。リチウムイオン電池に限らず、各種電池技術がある。
注5https://www.congress.gov/bill/119th-congress/house-bill/1/text, Sec. 70514 (b) (E)

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