【第3回】米国のエネルギー政策②:エネルギー技術への連邦政府の支援を再定義したOBBBA(包括的な税制・歳出改革法)と関税政策(4ページ目)
〔4〕太陽光セル・モジュール・EV・蓄電池への関税適用と輸入動向
(1)太陽光セル・モジュール市場
太陽光セル・モジュールの世界シェアは中国が圧倒的な1位で、2024年はセルが83%、モジュールが72%だった。これに続くのが、インド、マレーシア、ベトナムである。太陽光モジュールの米国の基礎関税率はゼロであるが、表1に示した301条、201条、AD/CVD、相互関税などの追加関税が積み重なり、合計は高率となる。世界市場シェアトップ5に入る中国のJA Solar(ジェーエーソーラー)のADは18.49%、CVDは15.71%である。LONGi(ロンジ)のADは23.17%、Jinko Solar(ジンコソーラー)は32.69%である。他の中国製モジュールではADのみで238.95%となる事例があり、その場合、他の追加関税も含めた合計の関税率は270%以上となる。このため、2021年時点で中国から米国への太陽光モジュールの輸入は、需要全体の1%以下まで縮小している。
米国では、国内の太陽光モジュール年間製造能力が2025年12月時点で64.8GWに達し、国内需要を賄うのには十分となった注6。しかし、上流の原材料であるインゴット(精錬した金属を加工し鋳造された金属の塊)、ウェファー、セルについては国内製造能力の構築は開始されたばかりで、依然として輸入に依存している。太陽光発電セルの米国に対する主な輸出国は韓国、タイ、マレーシアである。
(2)EV市場
EV市場もやはり中国企業が世界シェアのトップとなっており、2024年の中国企業によって生産されたEVの世界シェアは62%だった。中国から米国へのEVの輸出はもともと数量が小さく、ピークは2022年の14,764台だった注7。2024年9月から中国製EVに対する米国の301条関税が100%となったことから中国から米国へのEVの輸出はほぼ停止している状況である。つまり、米国市場においては、中国製EVは事実上締め出された状態になっている。
(3)蓄電池市場
図2に、米国への車載用および非車載用蓄電池の輸入額(通関時価格)の推移を示す。
車載用蓄電池についても、2024年9月から中国製は25%の関税(301条)が課され、さらに薬物流入対策関税、相互関税、AAM(蓄電池の原料となる負極活物質)のAD/CVDが加わったことで合計70%以上の関税率となった。結果として輸入は大幅減少している(図2上)。
非車載用蓄電池も同様で、2025年12月までは7.5%、2026年1月から25%の301条関税がかかり、総合で57~74.5%前後となる。こちらも輸入が減少傾向である(図2下)。
米国は、国内の蓄電池製造能力を増やしているが、需要を賄いきれておらず、韓国や日本からの輸入が増加している。韓国製の蓄電池の関税率は、自由貿易協定のため基礎関税がゼロで、相互関税の15%のみとなる。日本製に関しては基礎関税3.4%と相互関税15%で18.4%だったが、2025年9月3日に米国側で包括関税率15%が文書化されたため、韓国と同じ15%となる。
図2 中国・韓国・日本から米国への車載用および非車載用蓄電池の輸入額の推移
出所 米国国際貿易委員会のデータを基に著者作成
〔5〕米国のサプライチェーンは「中国依存からの脱却」を軸に再編へ
米国は、2011年から中国製太陽光モジュールへのAD/CVDを導入するなど国内産業保護を進めてきたが、今ではそれが安全保障を伴う「対中デカップリング」へと発展した。その結果、米国は国内での太陽光モジュールや蓄電池生産能力を強化し、不足分については中国以外から調達する体制を整えつつある。太陽光発電モジュールは、インドや東南アジア、蓄電池は韓国や日本が調達先となっている。
こうした流れは今後さらに加速し、米国のエネルギー機器のサプライチェーンは「中国依存からの脱却」を軸に再編されていくことになりそうだ。
注6:Solar Energy Industries Association (SEIA) https://seia.org/research-resources/solar-storage-supply-chain-dashboard/
注7:General Administration of Customs http://stats.customs.gov.cn/indexEn
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