IEEE 802.16標準は、2001年に固定系無線アクセス(FWA : Fixed Wireless Access)を目的に標準化が開始され、2005年12月にはモバイル環境での利用を可能とするIEEE 802.16e-2005(モバイルWiMAX)が標準化された(標準化の経緯については第1回記事を参照 )。今回は、モバイルWiMAXで使用されるマルチアンテナ技術の特徴を解説する。
伝送性能を向上させるマルチアンテナ技術
IEEE 802.16e-2005(モバイルWiMAX)では、システムの信頼性の向上および性能向上を図る目的で、複数のアンテナを利用して送受信し無線通信を効率よく行うマルチアンテナ技術をサポートしている。具体的には、伝搬路推定に基づく技術として、
(1)SM
(Special Multiplexing、空間多重)-MIMO
(2)STC
(Space Time Coding、時空間符号化)-MIMO(Multi Input Multi Output多重入出力)
(3)AAS
(Adaptive array Antenna System、適応的アレイ・アンテナ・システム)
が対象となっている。WiMAX フォーラムでモバイルWiMAXのリリース1(Wave2)プロファイルにはMIMO技術が含まれている。
ここで、伝搬路推定とはOFDMの各サブキャリアの振幅や位相の変動を知るために、伝搬路の周波数の応答特性を推定することである。また、Wave2とはモバイルWiMAXの認証試験の第2フェーズの規定を示す名称であり、次のような位置づけとなっている。
モバイルWiMAXのシステム・プロファイル
モバイルWiMAXのシステム・プロファイル(IEEE 802.16e-2005標準から必要な機能を選択したもの)は、SPWG(Service Provider Working Group)が策定した要求事項を元にリリース1とリリース2の2段階の作業に分類され、現在は、リリース1の検討が進められている。
リリース1の認証試験は、更に2つのフェーズに分類され、最初の段階をWave1、次の段階をWave2と呼んでいる。Wave1は、先行する韓国のWiBro(Wireless Broadband)に対応する事を意識したプロファイルであり、Wave2は、世界規模の普及を想定したモバイルWiMAXのプロファイルで、Wave2ではMIMO、IPv6、5段階のQoSクラス、MBS(Multicast and Broadcast Services、マルチキャスト型/ブロードキャスト型の情報伝送サービス)など先進的な技術が盛り込まれている。
また、AAS(Adaptive array Antenna System、適応的アレー・アンテナ・システム)はリリース1のプロファイルには含まれないが、モバイルWiMAXの伝送性能を向上する有効な手段であると期待され、次期規定のリリース2のプロファイルに含めることが想定されている。
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