パワーエレクトロニクスが活躍する分野
図3 パワーエレクトロニクス
〔1〕半導体デバイス・電子回路・制御技術で構成
パワーエレクトロニクスは、図3に示すように、半導体スイッチやインダクタ(コイル)やキャパシタ(コンデンサ)などのデバイス技術や電気・電子回路技術、制御技術から構成されていることは広く知られている。さらには、半導体集積(IC)デバイス、発電・蓄電デバイス、高周波回路、アンテナ、電気機器などの設計・製作技術をはじめ、熱設計や高密度化の技術も現在のパワーエレクトロニクスを支えている。
〔2〕本格的な普及期を迎えたHEMSやBEMS
現代文明をもたらした工場の多くの機器はすでに電化され、運輸分野でも汽車は真っ先に電化され、今や自動車から飛行機、さらには「はやぶさ」に代表される衛星といった世の中の技術を引っ張る最先端のものも電気を使用して推進する方向に移ろうとしている。これらの多くのものがパワーエレクトロニクス技術の発展の上に成り立っているといっても過言ではない。
そして、スマートフォンやタブレットといった情報機器が普及する一方、スマートグリッド時代の幕開けとともに家庭や商業ビルといった家庭・商業部門にまで、HEMSやBEMSなどのパワーエレクトロニクス機器が本格的に広がろうとしている。
「新・国家エネルギー戦略」や「エネルギー基本計画」などに基づいて作成された経済産業省「技術戦略マップ2012」の民生・商業部門においても、まさにパワーエレクトロニクス技術を駆使することでしか実現できない、次のような開発が2030年までの重点技術開発のロードマップとして示されている。
- HEMS・BEMSのための省エネ型情報機器
- 省エネ型次世代ネットワーク通信
- 省電力電源モジュール
- 省エネディスプレイ・照明機器
- それらを支えるデジタル制御電源技術
このように、民生・商業部門での活躍が最もパワーエレクトロニクス技術に期待されている分野の1つである。
スマートグリッド時代のこの分野では、電力・エネルギーが情報通信技術(ICT)によって制御・管理されることが前提であり、すでにスマートフォンなどによって電力使用量の見える化を実現するなど、世の中に普及し始めている。
一方、省エネなどを目的にして、無駄のないエネルギーの運用を目指しているはずが、実はエネルギーを細かく制御しようとすればするほど、情報量とともにそのための電力消費が増大するというジレンマが生じている。
そこで、図4に示すように、エネルギーと情報通信技術の間にスマートなパワーエレクトロニクス技術を介在させることによって、その矛盾を少しでも和らげる必要が出てきている。
図4 スマートパワーエレクトロニクス
小容量も含めたすべての電力変換器をデジタル制御で常に適切に動作させることが、エネルギーと情報通信技術の良好な関係を築くために重要である。中でも直接的に省エネ効果が期待できるのは、情報通信の核となるデータセンターの電源システムにおけるスマートパワーエレクトロニクス技術による省エネ化である。