NGNは、ボイス・セントリックからデータ・セントリックへ

NGNは、ボイス・セントリックからデータ・セントリックへ

青山友紀氏

青山 そこで今度のNGN(NXGN)は、4回目の挑戦になるのです。このNGN(NXGN)は、今度はインターネットで使用されているIPパケットをベースにして、電話サービス(IP電話)、データ通信サービス(インターネット)と、映像配信サービスのトリプル・プレイ・サービスを実現しようとしています。4回目のチャレンジも失敗したら、もう技術者としては失格ですね(笑)。今度は、絶対に成功させないといけないという、背水の陣のようなところがあるのです。

このNGN(NXGN)については、注目される一つの明るい話題があります。それは、これまでの過去3回のトリプル・プレイ・サービスへのチャレンジの失敗の原因の一つは、電話を中心に、それにデータ、映像を統合化する、ボイス・セントリック(音声中心)なネットワークでの挑戦だったということなのです。すなわち、電話がまずあって、それにFAXやデータ、画像やテレビ電話などを統合していきましょうというシナリオだったのです。

しかし、今回のNGN(NXGN)になって初めて、音声ではなく、インターネットのデータが中心であり、IPパケットによるデータ・セントリック(データ中心)のネットワークを目指すものなのです(図1)。これによって、本格的なVoIP(IP電話)による音声サービスや、インターネット・サービス(Webサービスも含む)、さらには、IPTV(IP TeleVision)による動画像配信サービスというトリプル・プレイ・サービスを実現するのです。

図2 「2つのシナリオ」
図1 「2つのシナリオ」(クリックで拡大)

すなわち、マルチメディア・オーバーIP(Multimedia over IP、マルチメディアをIPによって送受信する方式)というように、従来のボイス・セントリックから、データ・セントリックになっているというところが、従来と異なる、NGN(NXGN)の可能性が期待されるところなのです。

—いよいよIPによるマルチメディア・オーバーIPの登場ですね

青山 そうです。今回は、もう是が非でも、マルチメディア・オーバーIPを成功させましょうということですね。

(つづく)

プロフィール

青山友紀氏

青山 友紀

慶應義塾大学
デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構 教授

略歴
1969年 東京大学大学院電気工学科 修士課程修了。同年、日本電信電話公社入社。以降、電気通信研究所において情報通信システム、広帯域ネットワークなどの研究に従事。1973年より1年間、米国MITに客員研究員として滞在。1994年 NTT理事 光エレクトロニクス研究所所長、1995年 NTT理事 光ネットワークシステム研究所所長を歴任。1997年より東京大学工学系研究科教授。2000年より2006年3月まで、東京大学大学院情報理工学系研究科教授。2006年4月、慶應義塾大学に転じ、現在、同デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構教授。工学博士。デジタル信号処理、光通信、超高精細映像、などに関する著書(共著、監修を含む)多数。

主な役職
日本学術会議会員、電子情報通信学会フェロー、現在 同学会副会長、IEEE Fellow、超高速フォトニックネットワーク開発推進協議会会長、デジタルシネマ実験推進協議会会長、NPOディジタルシネマコンソーシアム理事長、NPO映像産業振興機構理事、ユビキタスネットワークフォーラム副会長、JGN2(ジャパンギガビットネットワーク2)運営委員会委員長

主な受賞歴
第9回電気通信普及財団テレコムシステム技術賞(平成6年)
平成12年度情報通信月間志田林三郎賞
第47回前島賞(平成13年度)
電子情報通信学会論文賞(平成14年度および平成16年度)
電子情報通信学会業績賞(平成16年度)
情報通信技術委員会 情報通信技術賞総務大臣表彰(平成16年度)

人気記事トップ10

人気記事ランキングをもっと見る
インプレスSmartGridニューズレター

定期購読は終了いたしました