NGN時代を迎えて、次世代ネットワーク(NGN=NXGN=Next Generation Network)と新世代ネットワーク(NWGN:New Generation Network)の混乱、NGNとインターネットの関係、NGNによるIPTVも含めたトリプル・プレイ・サービスの可能性、NGNと通信・放送の融合など、新しい課題の整理が求められています。そこで、現在慶應義塾大学 教授および独立行政法人情報通信研究機構(以下NICT)のプログラム・ディレクタとして、新世代ネットワーク・アーキテクチャなどの研究を進める青山友紀氏にお話をお聞きした。
≪テーマ1≫:次世代ネットワーク(NXGN)と新世代ネットワーク(NWGN)の違い
≪テーマ2≫:NGNは、アナログ電話網、ISDN、ATMによるB-ISDNに次ぐ4回目のチャレンジ
につづいて、今回は、
≪テーマ3≫:インターネットの課題とNGNのねらい
について語っていただきました。(文中、敬称略)
聞き手:インプレスR&D 標準技術編集部

インターネットの基本コンセプトと課題
—NGNはデータ・セントリック(データ中心)の形態で、3つの基本サービスの統合化(トリプル・プレイ・サービス)をねらうネットワークであり、大いに期待がもてるということでしたね!
青山 そのとおりです。そこで次に、NGNをどのように実現するか、そのアプローチが重要になるわけです。ここでその説明に入る前に、NGNではインターネットで使用されているIPパケット・ベースの技術を使用するので、まず、従来のインターネットのコンセプトと、インターネットの課題を概略的に整理してみると、表1、表2のようになります。
インターネット:
パケットを基本に善意を前提のネットワーク
—表1には、7項目が挙げられていますね

青山 そうです。まず、ここで表1に従ってインターネットの重要なコンセプトを簡単に説明しましょう。インターネットは、非常に明確なコンセプトのもとに構成されています。この辺は皆さんよくご存知のことと思いますが、インターネットの最大の特徴のひとつは、すべての情報をパケット化して転送するネットワークであることです。
また、そのユーザーたちは、研究者を中心として、善意で、利用技術のスキルが均一であるという前提で構築されてきました。つまり、悪意をもってそのサービスに妨害を与えるユーザーが出てくるというような事態は、想定していなかったのです。したがって、セキュリティのことはあまり配慮していなかったのです。
インターネット:ステューピッドなネットワーク
青山 それから、表1に示したエンド・ツー・エンド・アーギュメントといわれる概念は、簡単に言えば、端末がインテリジェントであり、ネットワークはパケットを転送するだけの機能しかもっていないということです。つまり、さまざまな処理(知的処理)はすべて端末で行い、ネットワークはひたすらパケットの転送を担当するだけであり、このためインターネットはステューピッド(愚かな)・ネットワークといわれることがあります。
これは、電話ネットワークとは正反対のコンセプトであり、電話ネットワークでは電話機は基本的にはマイクとスピーカーとダイヤルの機能があるだけで、ネットワークにすべてのインテリジェンスを与えてコントロールする形態となっています。すなわち、電話ネットワークは、ステューピッド(愚かな)端末とインテリジェント・ネットワークというように、インターネットとは逆の構成なのです。
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