NGN時代を迎えて、次世代ネットワーク(NGN=NXGN=Next Generation Network)と新世代ネットワーク(NWGN:New Generation Network)の混乱、NGNとインターネットの関係、NGNによるIPTVも含めたトリプル・プレイ・サービスの可能性、NGNと通信・放送の融合など、新しい課題の整理が求められています。
そこで、NTTにおいてデジタル信号処理をはじめ、ISDN、B-ISDN、ATM、光通信システム、超高精細画像システムなどを研究され、NTT光ネットワークシステム研究所長として活躍された後、東京大学大学院教授を経て、現在慶應義塾大学 教授および独立行政法人情報通信研究機構(以下、NICT)のプログラム・ディレクタとして、新世代ネットワーク・アーキテクチャなどの研究を進める青山友紀氏にお話をお聞きしました。
第1回の『≪テーマ1≫:次世代ネットワーク(NXGN)と新世代ネットワーク(NWGN)の違い 』につづいて、今回は、「≪テーマ2≫:NGNは、アナログ電話網、ISDN、ATMによるB-ISDNに次ぐ4回目のチャレンジ』について語っていただきました。(文中、敬称略)
聞き手:インプレスR&D 標準技術編集部

サービスの統合化(トリプル・プレイ)の歴史的な発展
—音声、データ、映像という3つの基本サービスを統合して提供するトリプル・プレイ・サービスが注目されていますが、どのような開発の歴史をもち、今後どのような内容のサービスが展開されていくのでしょうか?
青山 サービスの統合化、すなわちトリプル・プレイ・サービスの歴史的な発展については、表1に、第1期から第4期までを整理して示しました。このトリプル・プレイ・サービスについては、何を隠そう、私が大学を卒業して、NTT(当時の電電公社)に入った36年前の1969年には、すでに当時の電電公社は、そのサービスを提供することを目標に研究開発を始めていました。
私が入社した当時の電電公社の状況はどうだったかというと、電話加入者数の伸びが最も大きい時期でした。したがって、本職である電話サービスの早期提供を目指して、積帯解消(申し込んですぐ付く電話)が重要な課題でした。いわゆるS字カーブの変曲点にあったわけです。
それから、当時はまだ自動電話交換機の設置が普及しておらず、電話のオペレータが人力で電話をつないでいた地域も多い状況でした。これでは、とても増大する電話に対応しきれないため、オペレータなしの、電話の自動交換機を開発することが重要課題でした。
—アナログ電話が普及する全盛期だったのですね

青山 それから、積帯が解消するに従いユーザーがどんどん増え、それに比例してトラフィック(通話量)が増えるので、当時はアナログでしたけれど、大容量の伝送方式の開発が重要課題でした。当時は光ファイバが無い時代でしたので、同軸ケーブルによる超多重FDM(周波数分割多重)伝送方式の研究に大きなリソースを割いていました。
このような本職である電話サービスの研究開発とともに、当時の電々公社は電話の次のサービスとして、大型コンピュータと端末装置をデータ伝送モデム(MODEM)で接続し、計算サービスを行うデータ通信サービスの開発に大きなリソースを割いていました。
そのために、日の丸コンピュータとして、DIPS(ディップス)という大型計算機の開発がメーカーと共同で進められました。事実、私と同期に入社した多くの社員がこのデータ通信の研究部門に配属されました。
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