[特別レポート]

スタートした特定計量制度! ガイドラインに見る「対象となる計量例」と「対象とならない計量例」

― コーポレートPPA向け特定計量制度対応PCSも登場 ―
2022/08/11
(木)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

大きい特例計量器へのニーズ:太陽光のPCSやEV充放電設備の分野

〔1〕分散リソースの普及による新しい市場の台頭

 昨今、家庭における太陽光発電や電気自動車(以下、EV)などの普及や企業におけるコーポレートPPA注2など、太陽光やEV、蓄電池などの分散リソースの普及が活発化し、これらの新しい取引市場へのニーズが拡大している。

 このような市場の台頭とともに、その取引に使用される電気の計量に関して、

  1. 太陽光発電に付随するPCS
  2. EVに付随する充放電設備

などに適した合理的な計測機能をもつ計量器(以下、「特例計量器」)の利用ニーズが高まっている。

 しかし、現行の電気計量制度では、すべての電力取引に関する電力量の計量については、計量法に基づく検定などを受けた特定計量器(スマートメーター)の使用が必須となっている。

 そこで、国の定める基準に従って、国に事前に届出を行うことを前提に、計量法に基づく検定を受けない計量器を使用できるようにするために「特定計量制度」が設けられた。この制度に則った検定を受けない計量器は、「特例計量器」と呼ばれる。

〔2〕「特例計量器」の計量値の使用が可能

 特定計量制度は、家庭や企業などの分散リソースを活用した新たな取引に限り、事前に届出を行った事業者に対して、使用する「特例計量器」にスマートメーター並みの計測精度(後出の図7の「公差n3」を参照)を確保し、電力量の取引などにおいて、「特例計量器」の計量値の使用を可能とした制度である注3

 この制度の概要や特定計量の要件などについて具体例をまとめたものが、「特定計量制度に係るガイドライン」(以下、ガイドライン)である。

ガイドラインの概要

 表3に、このガイドラインに示された、特定計量制度の「対象となる計量例」と「対象とならない計量例」などを整理して示す。

表3 特定計量制度の「対象となる計量例」と「対象とならない計量例」等

表3 特定計量制度の「対象となる計量例」と「対象とならない計量例」等

PCS: Power Conditioning System
出所 経済産業省「特定計量制度に係るガイドライン」、令和4(2022)年4月1日

 なお、計量法に基づいて、日本電気計器検定所などの検定証印などの表示が付されている「特定計量器」(例:現在のスマートメーター)を使用して行う計量は、この制度(特定計量制度)を使用しなくとも、電力取引に使うことができる。

 次に、「特例計量器」について、計量例を紹介しよう。


▼ 注2
コーポレートPPA:企業などの電力需要家が、発電事業者から再エネ電力を長期に購入する契約。PPAはPower Purchase Agreementの略で、電力販売契約の意味。

▼ 注3
参考:経済産業省資源エネルギー庁「特定計量制度に基づく電気の計量について

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