今後の展開:最大32ギガトンもの不足をどう解決するか
― 1.5℃/ 2℃温度目標と国別目標とのギャップ ―今後の展開:最大32ギガトンもの不足をどう解決するか
図8は、『Emission Gap Report 2019』における、1.5℃および2℃の温度目標シナリオと国別削減目標とのギャップを示したものである。
図8 1.5℃/2℃目標シナリオと国別目標とのギャップ(2019年11月)
出所 “Emission Gap Report 2019”, United Nations Environment Programme
パリ協定が定めた温暖化を1.5℃あるいは2℃に抑えるためには、温室効果ガスの排出量を大きく削減しなければならない。2020年1月から始動するパリ協定の実現に向けて、各国はそれぞれ2030年までの削減目標〔前述した「約束草案」(NDC)〕を提出しているが、すべての国がその削減目標を達成したとしても、パリ協定を実現するための削減量が不足していることが判明した。
つまり、2℃目標には、
- 条件付き国別目標の場合は12ギガトン(12GtCO2e)
- 条件なし国別目標の場合は15ギガトン(GtCO2e)
の削減目標量がなお不足し、1.5℃目標には、
- 条件付き国別目標の場合は29ギガトン(GtCO2e)
- 条件なし国別目標の場合は32ギガトン(GtCO2e)
と、さらに厳しく削減目標量が不足するということである注8。
この『Emission Gap Report 2019』の発表直後の12月2日〜13日、スペインの首都マドリードで開催される、国連気候変動会議COP25において、このような厳しい現実をどう乗り越えるか。世界の国々が、地球温暖化対策に向けた不退転な決意と行動計画や、急速なイノベーションが求められている。急速に進む地球温暖化は、まさに待ったなしの状態となっている。
▼ 注8
(1)「条件なし国別目標」(約束草案)とは、「条件を付けないで自分の国だけで実現する場合」をいう。
(2)「条件付き国別目標」(約束草案)とは、「自分の国の排出量はこれだけ」しかし「国際的支援があったらこれだけ可能」というような条件付きの場合をいう。
関連記事
カーボンニュートラル時代! 日本の再エネ導入ポテンシャル
2021年6月4日 0:00
COP25に見る脱炭素社会への警告 ≪前編≫
2020年2月6日 0:00
【創刊7周年記念】 第36回 太陽光発電シンポジウムレポート 2050年に300GWの太陽光発電の導入へ
2019年12月12日 0:00
IGES 田村堅太郎氏に聞く!《後編》 2050年/1.5℃実現に向けた削減目標と『IGES 1.5℃ロードマップ』
2024年2月16日 0:00
次世代ビジネスのパラダイムを変える脱炭素化への新しい動き
2018年2月7日 0:00
加速するEV(ZEV)転換への世界的潮流
2022年1月9日 0:00