[特別レポート]

スタートした特定計量制度! ガイドラインに見る「対象となる計量例」と「対象とならない計量例」

― コーポレートPPA向け特定計量制度対応PCSも登場 ―
2022/08/11
(木)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

特定計量制度の対象とならない計量例

 リソース単位で計量する電力量の計量対象(例:照明器具やエアコン、テレビなど)が特定されておらず、特定計量制度の対象とならない計量例としては、次のような場合が想定される。

〔1〕計量対象が特定できない場合

 図4(1)に示すように、スマートメーターによる従来の電気計量が行われている箇所などで、需要家が使用する電気機器が多様で特定できない場合や、図4(2)に示すように、貸しビルやアパートなどの集合施設において、テナントや住居ごとに設置される親メーターの先にある、戸別の子メーターの先で使用される電気機器が特定できない場合は、特定計量制度の対象とならない計量となる。

図4 計量対象が特定できない場合

図4 計量対象が特定できない場合

出所 経済産業省「特定計量制度に係るガイドライン」、令和4(2022)年4月1日

〔2〕複数のリソース等をまとめて計量する場合

 また、前出の図2に示す分電盤の計量点Aと計量点B4は、対象とするリソースが特定できないため、特定計量の対象外となる。

 例えば、分電盤の計量点B4の分岐先がコンセントの場合、どのような電気機器(エアコンかテレビかなど)が接続され、計量の対象になるのかは特定できないからだ。

特定計量制度に対応したPCS製品が登場!

〔1〕産業向け太陽光発電用PCS「KPW-A-2-M」を発売開始

 このような特定計量制度のスタートや急速に拡大するコーポレートPPAビジネスを背景に、新しい特定計量制度に対応したPCSが登場した。

 オムロン ソーシアルソリューションズ注4(以下、OSS)は、業界で初めて、2022年4月施行の特定計量制度に対応した、産業向け太陽光発電用PCS「KPW-A-2-M」を6月上旬から発売開始した注5

 この発売に先立ってOSSは、特定計量制度の開始を受けて、業界で初めてスマートメーター相当の精度をもったPCSの電力計測機能を開発。その機能を、同社がすでに2020年6月に発売開始した、完全自家消費対応PCS「KPW-A-2」に搭載し、新機種「KPW-A-2-M」として発売した。

〔2〕高い計測精度:公差(誤差)n3を実現

 この「KPW-A-2-M」は、普通電力量計相当である計測精度「公差(誤差)階級n3」(使用前2%以内、使用中3%以内、後出の図7参照)という高精度計測を実現しており、「KPW-A-2-M」の電力量計測値を電力取引に使用できる。

 さらに、「KPW-A-2-M」の保証期間は15年間であり、計量法で定められた発電用スマートメーターの10年ごとの機器交換が不要であるため、トータルコストを削減できる。

 図5に、特定計量制度に対応した電力計測機能を搭載した、コーポレートPPAビジネス向けPCS「KPW-A-2-M」の主な仕様を、図6に、従来の発電用スマートメーターを不要にした「KPW-A-2-M」の導入事例を示す。

図6 産業向け太陽光発電用PCS「KPW-A-2-M」の導入事例

図6 産業向け太陽光発電用PCS「KPW-A-2-M」の導入事例

(注)余剰電力を逆潮流して売電を行う場合は売電用スマートメーターが必要。
出所 オムロン ソーシアルソリューションズ株式会社

 図7に、特定計量制度における電気計器の公差(誤差)を示す。公差にはn1〜n7の7階級あり、使用前が0.5〜8.0%、使用中が0.9〜10%となっている。それ以上に誤差の大きい電気計器は、特定計量に使用することはできない。

図7 特定計量制度における取引規模に応じた「公差」の階級

図7 特定計量制度における取引規模に応じた「公差」の階級

出所 経済産業省「特定計量制度に係るガイドライン」、令和4(2022)年4月1日

 経済産業大臣への届出者は、取引規模

(〜4kW、〜10kW、〜50kW、〜100kW、〜500kW)に応じて、図7の範囲Aから選択して取引を行うことが基本とされている。

*    *    *

 このような特定計量制度に対応したPCSやEV充放電器などは、今後相次いで発表されることが予測されるが、これが再エネを普及させ、2050年カーボンニュートラルの実現を加速することに期待したい。


▼ 注4
オムロン ソーシアルソリューションズ株式会社(敬称略):[本社所在地]〒108-0075 東京都港区港南2-3-13 品川フロントビル7F、[創業]2011(平成23)年4月1日、[資本金]50億円、[売上高]連結(2020年4月〜2021年3月)956億6,300万円、[従業員数]895人(2022年4月1日現在)、[代表取締役社長]細井 俊夫。

▼ 注5
業界初、特定計量制度に対応する産業向け太陽光発電用パワーコンディショナを6月より発売開始」、OOS2022年05月31日ニュースリリース

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